【中堂系】甘く檸檬のようなキスをして２

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"人気観光地に潜む危険な菌"


夏期休暇中の家族に悲劇が襲った。


人気観光地である山岳地帯の奥に広がる川で、水遊びをしていた高校生の長男と、中学生の次男2人が、レプトスピラ菌に感染し死亡。


部活中に出来た浅い擦り傷から、ウイルスが体内に入り込んだと思われる。夏のレジャーには注意が必要＿＿＿＿




ネットニュースにの記事には、そう書かれていた。


昨日の立ち入り禁止の看板は、これがきっかけだったのか…



「この菌は体内へ入ると、軽いもので風邪と同じ症状が現れ、悪化すると肝臓、腎臓に障害が出る。解剖した時の、臓器のうっ血はこれが原因だった。

因みに空気感染はしない」




補足説明をする先生に、久部くんがさらに質問を重ねる。



「でも、溺死の特徴の鼻と口の泡まつは…」

「泡まつは肺水腫でも現れる。今回の場合、菌を含んだ水が肺に溜まった事により、肺水腫と同じ状況が作り出された。

だから微量の泡まつがあった」





つまり、父は

"清潔ではない川に溺れ、一度は陸へ上がって助かったかに思われたが、菌を含んだ水を吸い込んでしまい、その菌が体内で循環し、症状が約1時間後に現れ、死亡した"



これが、父の死の全ての真相だ。

突然、オフィスの窓から強い風が入り込み
私の持っていた資料を掠め取るように、宙へと舞い上がらせる。


その刹那、解剖時に撮影された父の頭部の写真が目の端に映る。


一瞬、蚊の鳴くようなキーンとした高音が耳を刺す。





これは頭痛の合図だと、そう分かった時にはもう遅く、誰かに殴られたような痛みが脳内を締め付ける。



私が痛みに顔を歪ませると、皆が遠くの方で
心配する声が聞こえる。


これは、私の記憶が私に何かを伝えようとしている。その証拠に、事件当日の夜がまた蘇る。



学校から帰宅した際に、家から男が出て来た。顔はうまく思い出せないが、私はその男の首に
古傷があるのを見た光景を、思い出した。



確かこの映像、前にも思い出したような…




しばらく経つと、先程の痛みは嘘みたいに
ゆっくりと静まっていく。



閉じた瞼をこじ開けると、困惑した皆を置き去りにしてオフィスを飛び出す。

長い長い廊下を、ネイビーのコートをなびかせながら一目散に突っ切っていく。



吐く息も整えられずに、着いた先は遺体の保管室。父につけられた遺体番号の取っ手を引く。



あの首の古傷…私が確かめなければ…！！


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