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「…私、先生が好きです」
とうとう口にしてしまった。その瞬間
外の喧騒は一瞬にして聞こえなくなった。
言ったそばから、心臓が大きな律動を立てているのが分かる。
先生の、コーヒーを淹れる手がピタッと止まり
目を丸くしてこちらを捉える。
「………」
「………」
両者とも口を開かず、気まずい沈黙が
LDKの部屋一杯に流れる。
このままでは、窒息してしまうのではないかというくらい数秒が数分に、数分が数時間にも感じる。
…さあ、早く振って。
何でもいい。「寝ぼけてんのか」「お前になんて俺は興味ない」そう言ってくれれば、
ただの上司と部下に戻るから。
……私に諦めを頂戴。
先生は湯気の立つマグカップを、そっと置くと
山積みの本の前の私にどんどん近づいてくる。
私はとっさに右手を前に出し
先生が近づいてくるのを止めようとしたが
手首を掴まれ、呆気なく背後の壁に押し当てられる。
「ちょ、先生…」
訳が分からず、困惑した目を向けた
その瞬間。
先生は長身の身体を屈め、私の唇に
自分の唇を重ねてきたのだった。
「____ッ!?」
カッと目を見開いて、先生を見つめた。
もはや、困惑を通り越して頭が真っ白になる。
癖っ毛の隙間から覗く鋭い目つきに
射抜かれて、離せない。
そもそも何で?何で私は先生にキスされてるの!?
動揺を隠せない私に対し、先生はしれっと唇を離す。
やっと解放された私は、大きく息を吸うと同時に、頭がパンクして全身の力が抜けその場にへにゃりと座り込む。
額を押さえて、呆気にとられる私を先生は見下ろし、「こんなんでへばってんのか。バカが」と、薄く笑みを浮かべていた。
先生は何事も無かったかのように、踵を返して
顕微鏡を覗く。
一方、取り残された私は思考を巡らせる。
…え?何?もしかして振る振らないの話じゃなく、子供扱いされた?
その挙句、今までにないくらい馬鹿にされてる?
…そんな回避の仕方アリ?
悔しさと同時に今まで色々考えていた
自分が馬鹿馬鹿しく思えて、笑いが込み上げてくる。
終いには、「もういいですよ。先生のバカ」と
悪態をついて席に戻った。
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時