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ジミン先輩は何も言わずに通り過ぎて行った。
確実に私と目が合ったのに、何もなかったように、そのまま。
サラ先輩は私に気付いていたのかどうか分からない。
てか、先輩達一緒にお昼食べてたんですね。

「どしたの？美味しくなかった？」

まんまるの瞳でこちらを見つめるジョングクくん。
そのまま視線を私の後方に移した。
おそらくジミン先輩の背中を見ているのだろう。

「あ、もしかしてジミン先輩？」

『うん。ちょっとびっくりして』

「ごめん。怒られる？」

『まさか。付き合ってる訳じゃないし』

そう。私達は付き合っている訳じゃない。
ジミン先輩が怒る義理も、私が怒られる義理もない。

「そう？」

『うん。やっぱりテヒョン先輩みたいな人じゃなきゃ』

「テヒョンイヒョン？好きなの？」

驚いて少し背筋を伸ばしたジョングクくんに兎の耳が見えたような気がした。
かわいいな。
なんて余計なこと考えてる場合じゃないけど。
友達に話すノリでテヒョン先輩の名前を出したことに後悔した。

『好きってより、憧れ？』

「ふーん。ヒョン人気だから近付けないんじゃない？」

『そうなの。でも見てるだけでいいかなって』

「本当に？」

ニヤリと笑うジョングクくん。
橋を置いてごちそうさまでした、と言うとチラリと時計を確認する。
そして私のお皿を見て、私が食べ終わったことも確かめると、ガタンと音を立てて立ち上がった。

「会いに行こうよ。僕、テヒョンイヒョンと仲良いんだ。」