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周りの音が遠く聞こえる。

食堂から教室に帰ろうと歩く人混みの中を、

課題を出しに教授の元へと向かう誰かのすぐ側を、

ただただ夢中で走り抜けた。

冷たい空気が肺に忍び込んで、息が苦しくてたまらない。

それでもジミン先輩の姿を探しながら、走って、走って、

走って…

「A？」

ふと背後から声がした。
今まで忙しなく動いていた身体がピタリと止まる。
振り返る前に力が抜けてそのまま床に座り込んだ。

「A！？」

『グク…』

「そんなに走ってどうs…え、泣いてる？」

『泣いっ、て、ない…』

「も〜…泣いてるじゃん…」

よしよし、って赤ちゃんをあやすように宥めてくれるグク。
わざわざパーカーの袖を引き伸ばして私の涙を優しく拭ってくれた。

「立てる？移動しよう」

『やだ…』

「こら、やだじゃないの。ここ寒いし目立つよ？」

グクの言う通り、座り込んで泣いている私としゃがんで私の相手をしてくれていたグクの周りにはにわかに人が集まり始めていた。
ジョングク？え、あの子誰？彼女？なんて声も聞こえたので仕方なく立ち上がろうとすると、ふわっと身体が持ち上がる。

『え…？』

「ごめん。揺らさないように頑張るね！」

『え！？』

降ろしてと言う暇もなくグクは走り始めた。
そして懲りない私は心の片隅で"もしこの状況をジミン先輩に見られたら…"なんてことを考えてしまう。
先輩はまた怒ってくれるのだろうか。
好きなのに。
会いたいのに。
どうして先輩は会いたい時に限って出てきてくれないんだろう。