3万分の1 (ページ15)

今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:45,711 hit

14 ページ15

___

「Aっ！」

元気よく私を呼ぶのは日も経ちすっかり仲良くなったグク。
今日は薄紫のパーカーを着ていて、それがよく似合っていた。

『何〜？』

「ちょっとこれ運ぶの手伝ってくれない？」

『なにこれ。学祭のやつ？』

「うん。その画用紙とメガホンお願い」

そう、もうすぐ学祭が始まる時期になる。
もっと持てるよ、と言ったら僕だって男なんだけどな！って断られてしまった。
別に男扱いしてないつもりは無いのに。

「Aはさ、僕に可愛いって言い過ぎだと思うんだよね。」

『え？そんな事ないよ』

あ、ジミン先輩の教室だ。
教室内を素早くスキャンすると後方の席にジミン先輩の姿を発見した。
隣にはサラ先輩の姿がある。
なんと言うか…私のタイミングが悪いのか、常にサラ先輩がジミン先輩の近くにいるのか、一体どっちなのだろう。

「かっこいいの方が嬉しいんだけど？」

『…。』

「A〜。」

『あ、ごめん。何？』

「気になる？」

何が、なんて聞かなくても分かった。
グクの目がジミン先輩を捉えていたから。

『いや、たまたま目に入って』

「本当に？」

グクは無邪気で、こういう時は面白いおもちゃを見つけた子供のように目をキラキラ輝かせる。
可愛いけど…残念ながらジミン先輩のことはそういうんじゃない。

『たまたまだよ。だからその可愛い顔やめて』

「あ、ほらまた可愛いって言った！」

『あーかっこいいかっこいい』

「思ってないじゃん！」

いじけるグクを横目にもう一度教室を見るけど、そこにはもうジミン先輩の姿は見当たらない。
もういいよ、置いてくからね！って走り出したグクを早足で追いかけた。