第九十二話 過去の話は終わりにしよう ページ46
山姥切「…普通の人間なら即死してもおかしくない…だが主は倒れるどころかずっと……俺を見て笑っていた…陸奥守が何度も…何度も主を切り裂いていたのにも関わらず…」
山姥切はその光景を鮮明に思い出せる。あの時、陸奥守が泣きながら刀を振るっていたことを。
山姥切「俺は…目の前で主が崩れ倒れるのを見てから記憶があまりない…」
『…』
審神者が死んでいた現場やそのほかの情報は資料を読んだ。確か、審神者は何度も斬られた形跡。凶器である刀は陸奥守吉行の物である。と書いてあったはず。だが陸奥守は己の刀を持っていなかった。
『……』
山姥切「なあ…あんたなら…俺と陸奥守がどうなっていたのかわかるんだろう?」
『…山姥切さんも陸奥守さんも呪いが完成した時点で刀剣男士とは少しずれてしまっています。陸奥守さんは山姥切さんの呪いを軽減させることによって…』
最後は助けることが不可能な領域に達してしまっていた…
山姥切「…相変わらず、優しいな…陸奥守は…」
『…』
山姥切「あんたも優しいな。俺が長くないことを伏せて」
『……それは――』
山姥切「いい。わかっている。俺はこの呪いから逃げることはできない。折れた後もな。主が俺に強い恨みを抱いていることもわかっていた。だがそれを陸奥守…あんたによって助けられた。少ないこの寿命を無駄にしたくはない」
山姥切は私の目を見ている。それはあの本丸で見た時とは違う。確かな強い意志が見える。
山姥切「俺を使ってはくれないか」
『使う…ですか』
山姥切「あぁ。なんでもいい。あんたがしたいようにしてくれていい。少しでも役に立てればそれでいい」
『なら―――』
そのあと、私は山姥切に本丸であった出来事を時々でいいから手紙で送ってくれと頼んだ。必ずしも行った本丸がいい場所ではない。だがブラック本丸は政府から逃げるのが上手い審神者。また政府が気付いていても目をそらしてる本丸。と色々ある。刀剣男士の声は届かない場合が多い。だから内部から知らせることが出来れば私が動きやすく、助けられる人数も増える。だからそう頼んだ。
私の霊力に触れた時に本当の内容が浮かび上がる便箋を渡して。
『この手紙…一体、何年前なのだろうか』
私が眠りについていた時期に送られてきた物だったらもう……
「何をしている」
『!?』
真後ろから声がして振り返る。そこには
『大倶利伽羅……』
大俱利伽羅「…」
無言で近づいてい来る大倶利伽羅。近い、近いぞ…??
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作者名:稲森 | 作成日時:2021年3月11日 22時