第八十九話 最後の真相を話したいところだが文字数がない ページ44
『……あれ』
はっきりと意識が戻った時には布団の上。なんとなく山姥切に引っ張られて闇から出てきた私は彼らに支えられこの布団に辿り着いたのを覚えている。
乱「審神者さん!」
優しく目の前から乱に抱きしめられる。とても良いにおいがする…じゃなくて
『ご心配をおかけしました』
乱「良かった…良かった!」
『乱さん体は大丈夫ですか?それと山姥切さんも――』
山姥切「俺は無事だ」
こちらを見ている山姥切。
三日月「随分と元気になった。俺たちもな」
『恐らく。呪いが解けたのでしょう』
乱「だから僕も元気になったよ。まだ怪我は治ってないけど」
そういって笑う乱。彼の手を取ってみる。
『これで完全復活ですね』
乱「え!?怪我が…ない!」
包帯を取って目を輝かせる乱。
乱「すごい審神者さん!どうやったの!?」
『普通に手入れをしただけです』
石切丸「これは凄いね」
松井江「ただ者じゃない」
『皆さんも手を』
そっと手を差し出す松井江、石切丸。山姥切の手を握りあっという間に手入れが終わる。
三日月「約束。護ってくれてありがとう審神者よ」
乱「僕からもありがとう!」
『ですが、むつの――』
乱「いいの。わかってたんだ。陸奥守さんはもう戻ってこれないの。我儘言っちゃってごめんね」
『いえ』
乱「僕らは審神者さん、山姥切さんが戻ってきてくれて本当に嬉しいよ」
そういって微笑んだ彼ら。死にたいという気持ちはもうどこにもなく。ただ純粋な笑顔があった。あの後。私は政府に連絡をし仕事が終わったことを報告。呪いとして使われた本丸は解体することになった。そのため山姥切たちは一時的に政府に預けられることに。
『私はこれで』
乱「審神者さん!」
社畜生活に戻る前。私は最後。まあ本丸に行く子達が多いから最後というわけでもないが。私は社畜。そして本丸はかなりある。めぐり合うのはとても難しい。だからほとんどの場合会うことはない。乱は泣き顔で私を抱きしめる。
乱「また会おうね」
『また会いましょう』
山姥切「待て。審神者」
『どうかしました?』
山姥切「後で話がしたい。二人で」
三日月「若いなあ」
『あ…そういう?』
山姥切「違う!!!…お前にはちゃんと話したいんだ」
恐らく。この本丸で何があったのか真相を私に話したいのだろう。本来ならこの真相は政府に報告しなければならない。けれど山姥切が呪いに関わっていたと言ってはいけない。そうなれば最後。彼らの刀解は避けられなかったからだ。
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作者名:稲森 | 作成日時:2021年3月11日 22時