第七十九話 手紙のおくりぬし ページ34
『なにしてんだ私…』
縁側に座り一人ぽつりと呟く。
大人げないというか…我儘になってるなあ私。
『…大丈夫だ落ち着け』
謝りに行こう。もう少し頭冷やして
『あそういえば』
私が連れ去られる事件の前に川上から手紙が来てるって
『確か…』
自分の部屋に戻り棚を見る。ここに山姥切が入れたとかなんとか言ってたと思う。
『あったあった』
少し黄ばんだ古びた便せん。開けば綺麗な字が並んでいる。
『……これは』
短い手紙に思えたが私が触れた瞬間。手紙の内容が変わっている。特定の霊力を感じ取ると変化するものだ。昔政府でよく使っていたが…手紙を送る際に他の職員に内容を確認される。その際確認されて困る内容を書く際に使っていた。この便せんは私が勝手作った物…それを子の相手が使っているということは…
手紙の内容は
大分手紙を出すのが遅れてしまった。本当は本丸を移動する前に送りたかった。だが手紙を出すことを今日やっと許可が出た。だから今こうして書いている。拙い文になるとは思うが読んでくれ。
あの日からあんたのおかげで僅かだが俺たちの仲間は救われた。感謝している。もうどうにもならないと思っていたからな。俺と乱、松井江、石切丸はそれぞれ違う本丸にだが移動することになった。三日月と小狐丸は政府に移動になった。きっとあんたの働きぶりを見て政府に興味を持ったんだろう。あの二振りが何かに興味を持つのは本当に変わった証拠だ。ずっと本丸の奥でしまわれていたあいつらに生きる力をくれて本当にありがとう。俺たちに希望を見せてくれてありがとう。
だが俺はもう長く持たない。違う本丸に来てから数週間。俺の体に違和感を感じるようになった。最初は何か異物が喉にあるようなそんな感覚だ。だが昨日。吐血した。その後もずっと体が重い。すまない。俺は再び間違えたようだ。恐らくだが俺は呪術を掛ける呪物とされたようだ。ここ最近、主の様子がおかしかったのはきっとこれのせいだろう。主は誰かに呪いをかけるつもりでいる。誰かまでは特定できなかったが。この手紙を書いてあんたに知らせようと思っている。まあ無駄だろうがな。これが届くころには俺はもういない。またあの暗い世界に戻ることになる。助けてもらったのに本当にすまない。俺のことは心配するな。あの場所には慣れている。
だがもし叶うなら俺以外の皆が無事なこと、あんたが元気なことを祈る。
山姥切国広より
『…まさ、か』
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作者名:稲森 | 作成日時:2021年3月11日 22時