第四十五話 お久しぶりのあれですな ページ47
薬研「っと。そうだな」
流石に状況を理解した薬研。
薬研「堀川の旦那は他の連中が来ないように見張っててくれ」
堀川「わかったよ！」
少し頬を赤らめた堀川は見張りへ。
薬研「山姥切の旦那は大将の血をこの布で拭き取ってくれ」
山姥切「わ、わかった」
ぎこちなく動く山姥切は私の血を辿って消えていく。
薬研「さて、大将。包帯巻きなおすぞ」
『お願いします…』
手際よく始める薬研。見る見る汚れはなくなる。
薬研「大将。目が覚めて良かった…」
『ごめんね、また心配かけて』
私は薬研の頭を撫でた。その時、ぽつりと温かい雫が落ちる。
『え、あ痛かった！？』
薬研「違う。ちょっとな…それよりあまり動くなよ。また血が出る」
『あはい』
薬研「返事はしなくていい。聞いててくれ」
気付けば包帯を綺麗に巻かれ始めている。私は無言で頷く。
薬研「大将の傷は普通なら死んでる。大将、ここまでくるのにかなり苦労しただろう」
確かに大変でしたよ…
薬研「こうやって立って歩けてるだけでも不思議だ。本当ならまだ病院で集中治療室行き。丁度昨日、集中治療室から出て本丸に連れてきたんだ。本丸に連れてきた理由がな。医者がもう長くない。病院で出来ることはもう尽くした。なら本丸で共にいたほうがいい、という提案が出たからなんだぜ？」
えそれって…
薬研は包帯を巻き終え崩した衣服を整える。背中に回っているため表情は見えない。
薬研「今の技術でも追いつけな程あんたは致命傷だった。だが今はどうだ？帰ってきた翌日にこうやって…俺っちの前に、いる」
声が震えている。
薬研「本当に、良かった」
『…ごめんね』
薬研「全く…何度俺たちを泣かせば気が済むんだっ！」
背で顔をうずめて泣く薬研を私は後ろに手を回し私より小さい頭を撫でた。
「何をしているのですかな？」
声のする方へ顔を向ける。そこにはにっこにこの笑顔でこちらを見ている。目は勿論笑っているわけがない。
『い、一期一振』
あれ、堀川見張り…どうしたのかな…？
一期「弟をまた泣かせているみたいですなあ」
『え、いやあの、これは―――』
一期「事実ですよね主殿？」
『ハイ』
一期「素直な子は好きですぞ」
え…太刀を抜いてなんで近づいてくるんですかね？？？
『あのー…一期様』
一期「何か遺言でもあるのでしたらお聞きしますよ」
『私、まだ病人どすぇ…？』
一期「……ふざけてますね？」
えぇ……誰か
『た、助けて！！！』
一期「お覚悟！！！」
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作者名：稲森 | 作成日時：2020年12月21日 22時
