第四十二話 いや誰ー ページ44
三日月の笑い声が後ろから聞こえる。振り返ることはできないが
『もう三日月は大丈夫だ』
確信した。これからは私の問題。光りの先。近そうで近くない。
『……』
うーん。私あとどのくらい歩けばいいんだろう。
『暇だから走りるか』
ついでに
『本丸に帰ったら仕事しなきゃ。まず相談室の方は誰か来てないか確認。政府からの仕事をこなして…まって今何時だっけな。夕時?正直現世帰りにそのまま連れられたからな…そもそもこっちの時間ってどうなってんだ…』
諸々考えながら走る。
『……まだ?』
遠くね?
『…え待って嘘みたいに進まないやん?』
進んでなくないか?
『さっきより暗くなってる』
進まないが闇は迫る。きっとこの世界。私の霊力が弱くなったから保てなくなってる…。
『!?』
ぐにゃり、と足元が沈む。進めようと足を上げるが足元全てが暗い沼に変わっている。
『こんなのっ!振り返えるよう仕向けてるんじゃなくてっ!確実に殺しにかかってんだろ!!』
進めたい足は沈み落ちていく。体も。
『がっ!』
足が何かに引っ張られる。そのまま私は沼の中へ。
息が、できない…っ!!
必死に暗闇の中、私はもがいて上へ。中に落ちて分かった。ここはとても暗くて寂しくて苦しくて。妬ましくて憎くて。感情全てがごっちゃ混ぜの世界。人か物の怪かわからない誰かの念の塊が蠢いている。
その時だ
『!!!』
暗闇なのに私ははっきり見た。目の前にいたのは
『山姥ぎ――』
暗闇の中なのに目の前の彼もまたモノクロ。けれど確かにそれは山姥切国広。口にした名前を止めたのは。急にそのモノクロの山姥切は私を上へと引っ張り上げてくれたからだ。
そして何より
山姥切「借りを返しに来た」
借り…?
山姥切「お前はここにいるべきじゃない。他の俺たちが待っている」
負の感情が蠢いて私目掛けてくる。彼もまたそのうちの一つ、なのかもしれない。だがその目は翡翠色の彼の目は美しく輝いていた。
苦しい…私は意識ぎりぎりで最後の彼の言葉を聞いた。
山姥切「もうここへは来るな。言っただろう、助けるのは次で最後だと」
私の視界も意識も暗くなる。
その頃。
山姥切たちはずっと待っていた。
加州「ねぇ、そろそろまずくない?」
山姥切「あぁ…」
主の世界は徐々に崩壊を始めている。
三日月「…」
三日月はずっと同じ場所で立ち尽くしていた。
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作者名:稲森 | 作成日時:2020年12月21日 22時