第四十話 別れとは辛い ページ42
清光「んじゃ…主」
ポン、と手で私の頭を撫でる。
清光「主、ありがとう。俺。いや俺たち。主の刀で良かった。もう会えないけどさ…でも忘れないで。俺たちは側にいる。これからもずっと」
穏やかだった。皆、それぞれの笑顔で。泣いたり、笑っていたり。
『うん。忘れないよ、これからもずっと。皆を』
清光の腕が離れる。
『ずっと一緒』
清光「当り前じゃん。じゃ、三日月。主をちゃんと送ってよね」
三日月「あい。任された」
私は三日月と共に。
『ありがとう、皆…』
三日月「主、手を。はぐれたら俺が色んなものに怒られるからな」
私は最後の男士。三日月の手を握る。
清光「主、またね！！！」
『！』
振り返って私は手を振る。笑ってるだろうけれど目が熱い。でもしっかり私は笑って手を振る。
『またね！！！』
三日月に優しく手を引かれ私は背を向けた。
清光「……あーあ行っちゃったな」
薬研「泣くな清光」
清光「っ、こんなの…泣くだろ…」
山姥切「泣くことはない。俺たちはきっとこれからもあいつと、主と共にある」
清光「…う、ん……」
髭切「そんなに悲しいなら神隠しすればいいのに」
膝丸「兄者」
髭切「なんて冗談だよ冗談。もー弟は冗談が通じない」
清光「…すれば、良かったかな、なんて。したら主は怒るだろうな。そういう人だもん」
きっと。
『わざわざ神隠しなんてして貴方達が悪者になる必要はない！』
山姥切「言いそうだな」
薬研「間違いない」
清光「…優しいんだよあの人は」
闇が前を見えなくする。俺たちはもうあの向こうに行くことはない。けれど、俺たちは主を見守ることはできる。側にいなくても。
三日月「よしよし。主は善い子だ」
『……っ』
歩きながらまだ泣いている私を三日月は片手を引きながらゆっくりと私のペースに合わせている。
三日月「辛いだろうこの道は。だから俺がいる。大丈夫だ」
この道を歩いていると。先よりも昔の思い出がやたら蘇る。悲しく寂しくなる。どうやらこの道はそういったものらしい。
三日月「大丈夫、大丈夫だ」
優しく穏やかでいつも包み込んでくれる声。その声だけで私は今歩けている。まるで幼子を慰める父のようだ。
三日月「主、主。悪いがもう少し早めに歩くぞ」
『…うん』
三日月「うむ、善い子だ」
恐らく時間が迫っている。闇が迫っている。三日月の握る力が強くなった。
三日月「恐らくだが少しの間、主は一人で道を歩かなければならない」
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作者名：稲森 | 作成日時：2020年12月21日 22時
