第三十九話 一番可愛い ページ40
薬研「色々な…」
意味を理解したのか薬研が少々複雑な顔をする。
『薬研って他人優先だった』
薬研「他人優先か。霊力を供給する関係で審神者と刀剣男士が似るっていう話がある。だからだろうな。俺は大将に似ちまったんだ」
清光「ほんとだよ。薬研にひやひやすることも沢山あったんだから。主のせいで」
『え私のせいなの!?』
清光「うん」
『断言したぞ…』
山姥切「手入れ部屋に中々入らず怪我を隠すことも多々あったからな。俺と清光が見ていなかったら重傷は絶えなかっただろうな」
『薬研隠すの本当にうまいよね。いや感心してる場合じゃないんだけど…二人とも見つけてくれてありがとうございました』
清光「はいはい」
薬研「んじゃ。交代だな」
ぱっと離される。
『うおっと!?』
急に離れたおかげで倒れる私。けれど
清光「っと。ちょっと薬研急に離れないでよ…」
がっしりと私よりも細いだろう腕で軽々と片腕で受け止める清光。初期刀。
……イケメンか。イケメンだな。
薬研「すまんな。ほら、甘えていいぞ初期刀様」
清光「雑だなあ。主大丈夫?」
『は、はい』
清光「……じゃ」
ぎゅっと。抱きしめられる。
『……なんか誰よりも恥ずかしいんだが』
清光「…うっさい。俺だって恥ずかしくなるじゃん」
更に腕の力が強くなる。痛くはない。
『……ありがとう、清光。今まで』
初期刀。言わずとも審神者になった際に最初に手にする刀。やはり最初ということもあり仲が良いとう審神者も少なくない。他の男士とはちょっと違う。一番ぶつかることが多かった刀だ。
それは紛れもない。家族喧嘩というものに近い。
今の山姥切がよく怒っているが、清光も昔はそれに近かった。感情任せではない。いつもどうしてあんなことをしたのか、と。もっと自分を大切にしなよ、と。
たまにはお互いヒートアップしてボロボロに泣きながら喧嘩もしていた。その時は大体、山姥切が仲裁に入り清光の弁護をし始めるので三日月が入って終わるというパターン。薬研は話がややこしくならないように進行役をしていた。
当時の私は男士たちを責めたり強制的で辛い労働をさせる。わけではなく審神者自身が自分に辛い仕事をさせる。っということをしていた。
『一番喧嘩したのも清光。話を沢山したのも清光。一番長く一緒にいたのも。何かするときいつもいてくれた。本当にありがとう』
清光「…へへっ。俺今最高に幸せ」
笑った清光。今まで一番可愛い。
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作者名:稲森 | 作成日時:2020年12月21日 22時