第三十四話 やったぜ ページ35
改めて見えると
『え。私体ある！！動ける！！やった！！』
それを見て三日月は笑う。とても楽しそうに。その笑顔を見て私も笑う。けれどその場所を見て私の笑顔は消えた。
『ここ…』
私が一度死にかけた時、小狐丸と共に歩いたあの場所だ。花が咲いている。とても温かい場所。けれど……
『…三日月』
宗近「そんな悲しい顔をしてると皆が悲しむぞ」
『え――』
背に懐かしく温かい温もりを感じる。包まれる。
『……き、よみつ』
黒髪で高めのヒールを履いて赤いマフラーを巻いて。耳には金色のピアスをつけた私の初期刀。
清光「そうだよ、俺だよ。主」
ぎゅっと抱きしめられるそれだけで私の目からは雫が止まらない。
『っ』
清光「会いたかったずっと…っ」
薬研「大将。そんなに泣いてると腫れちまうぜ？」
覗き込むように私の前に来たのは初鍛刀の薬研藤四郎だ。
『や、げっ…』
もう声は出ない。
薬研「…悪かったな大将。守ってやれなくて」
喉奥から泣き声しか出ない私はただ首を横に振った。そんなことない、謝る必要はない。
私が悪かったのだ。全て私が…
山姥切「あんたが悪いわけがない。誰もあんたを責めてなんかいない。…よく一人で頑張った」
堀川「そうですよ、主さん」
五虎退「はい」
次々と現れる男士たち。蘇るあの時の日々を。しばらく私は男士たちに囲まれながら泣きじゃくった。
もう二度と会えることはないと思っていた。
もう二度とこの温もりを感じること、声も全て。
『っ…』
前田「少しは落ち着きましたか？」
『うん…まだ泣きたいけど』
鶯丸「主、これ以上泣くと大包平の涙も止まらなくなる」
大包平「俺はッ！！！泣いて、なんかっ！！！ないぞ！！！ズビッ！！」
明石「思い切り鼻鳴らしてますやん…」
一期「本当ですな」
あぁ…本当に皆がいるんだな……
『…会えて本当に嬉しいよ。…でも三日月。どうしてこうなったのか説明はしてほしいな』
三日月「勿論。今そうしようと思っていたところだ」
今剣「ぜったいにうそですね」
岩融「嘘だな」
石切丸「嘘だね」
小狐丸「嘘です」
三日月「はっはっは。では話そう」
さすが三条。ぶれない。
三日月「主が生き返れるのは本当だ。霊力は俺が補充できるからな。だが問題がある。主は生き返れるが前のように霊力が上手く扱うことが難しくなるかもしれん。脆くなった主の器をほぼ強制的に復活させるからな」
『前のように好き勝手出来なくなるのか…』
それは不便だ。色々と。
第三十五話 ばれてた→←第三十三話 死ぬのね走馬灯が見えるのよ…
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作者名：稲森 | 作成日時：2020年12月21日 22時
