第二十五話 人とは ページ26
そんなわけで。三日月たちの救出に成功し、主がいる方へ向かっている。
鶴丸「で。主が暴走ってわけだな」
大俱利伽羅「あぁ」
篭手切江「あの…」
篭手切江が恐る恐る声を掛ける。
篭手切江「主さんが暴走しているのはなんとなくわかりました…僕たちのように神になりかけていることも。ですが一つ…」
皆の視線が篭手切江に集まった。
篭手切江「どうして…それに主さんは気付かなかったのでしょうか…」
桑名江「ごめん…どういうこと？」
豊前江「気付かなかったって。何にだ？」
篭手切江「えっとその…主さんはとても優秀です。生活を共にしている中で少しずつわかってきたことなんですが……僕たち刀剣男士が気付かないことをいとも簡単に気付いて処理をする主さんが自分が神になりかけていることに気づかないのはおかしいと思いませんか？」
静まり返る場。篭手切江は焦る。
篭手切江「あの！決して主さんを馬鹿にしてるとかそういわけでは―――」
松井江「そうだね。篭手切江の言う通り。それは引っかかる」
光忠「…確かに」
鶴丸「そうだな。まあ主が人間から離れ始めてるのはなんとなく。初めて会った時から気付いてはいた」
鶴丸は初めて会ったあの日を思い出していた。なんとなく遠目から見ていた。殺意しかない落とし穴を仕掛けたこともある。けれど引っかかるどころか。主は
『ん？あれ…こんなところに落とし穴……誰かが落ちたら危ないから戻そう』
と言っていたのを聞いて。思わず吹いた。
この話は特別関係ないぞ。
鶴丸「だが本当に人の枠からはみ出したと感じたのは最近だな」
貞宗「…俺、あまり気付かなかった」
光忠「僕もだよ…」
大俱利伽羅「で。その質問に対しては何か知っているのか？」
大倶利伽羅は三日月に視線を向ける。
大俱利伽羅「あんたが一番知っているだろう」
三日月「そうだな。答えよう」
人ならざる町の中。あまり妖怪どもがいない路地を駆け抜けながら三日月話す。
三日月「篭手切江の言う通り、主は気付いていた。己がどうなっているかを」
篭手切江「…」
三日月「だが主は気付かないそぶりをしていた。人が神になることがどれだけの恐怖か。主にはわかるのだろう。わかってしまうのだろう。元々こちら側をよく知る人間だ。霊力もある。それ故に。だな」
段々と主の霊力を感じる。そして目の前に現れた店。案内役の式神の狐が待っていた。
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作者名：稲森 | 作成日時：2020年12月21日 22時
