90話 ページ42
.
ぽん、ぽん、と優しい手つきで雪代さんが濡れた髪を乾かしてくれる
懐かしい上海の空気、もう住み慣れてしまったお屋敷、そしてタオルがすっごくふわふわなのも相まって…なんだかとても心地良い
だがしかし…
「……。」
「…………。」
沈黙…ッ!あまりにも沈黙!
まったく雪代さんたら、こういう時は普通男性側から小粋なトークを提供するべきだと思うんですよ
「…なんかお話しません?」
「何を」
「えっ…。あ…、えと…好きな…食べっ、色とか…動物とか…?」
バカが考えたバカの話題!
己の絶望的すぎる話題提示能力に羞恥を覚えつつ雪代さんの方を見ると、彼はまあ予想通り。少し小馬鹿にしたような顔をこちらに向けていた
「下手くそか」
「うっ、うるさいなぁ…」
とん、と頭を軽く小突かれ、それが乾かし終わりの合図だと分かる
次はわたしの番!と半ば強引に雪代さんを椅子に座らせると、後ろに立って新しいタオルを手に取った
「あは、やっぱり髪の毛ぺちゃんこの雪代さんかわいい」
先程雪代さんにしてもらったのと同じように、優しくタオルで髪の毛を拭っていく
「…可愛いわけあるか。おぞましいことを言うな」
「えっ?雪代さんかわいいですよ!」
「はぁ…?」
本気でわけが分からない。そんなドン引きの表情で雪代さんがこちらを見やる。うんうん、その顔もかわいいです
「んっとね、沢山あるんですけど〜…、特にかわいいなって思うのは…
えへへ、あのね、自覚ないんでしょうけど雪代さん、わたしと話してるうちに中国なまりが消えてカタコト日本語じゃなくなってるんです!」
「…は?そりゃこれだけ日本にいたら…」
「それだけじゃなくてですね〜
わたし、ほんの少し故郷の訛りがあるんですけど…。それが雪代さんにうつっちゃってるんです!」
言い終わってから耐えられなくなってついつい吹き出してしまい、最終的に あははは!かわいーっ!と大笑いすると、何も言わない雪代さんがわたしの右手を掴んだ
「…!?」
怒……?殴……?
「な、なんですか!暴力はダメですよ!」
「……」
「なんで黙って…うわあ!?」
文字通り、わたしは傍から見たら今、宙に浮いていたであろう。雪代さんに力強く腕を引かれ、椅子の背もたれを一回転して飛び越えたわたしは、雪代さんの膝の上に乗っかる形で着地をキメていた
828人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はな - 完結してかも何回も何回も読み直させてもらってます!いつか短編集も読めることを楽しみにしています🥺💗 (10月1日 23時) (レス) @page49 id: 5a141b2009 (このIDを非表示/違反報告)
武山(プロフ) - ちかさん» ありがとうございます😭‼️雪代縁よ…こうであれ…と欲のままに筆を走らせたのでそう言っていただけてとても嬉しいです😫💖短編集の方も欲望のままに書きなぐりますね🥺💗 (2023年1月27日 12時) (レス) id: ffc85090d4 (このIDを非表示/違反報告)
武山(プロフ) - 酒饅頭さん» うわ〜!嬉しいです!雪代縁を雪代縁っぽく喋らせるのめっちゃ難しいですよね…😂これほんとに雪代縁?となりながら夢主との掛け合いを書いていたのでそう言っていただけて安心しました!😭読んでくださりありがとうございます! (2023年1月27日 12時) (レス) id: ffc85090d4 (このIDを非表示/違反報告)
武山(プロフ) - ましゅまろぉさん» ありがとうございます!わたしもハマりたての時に探して え!?メリバしかねぇ!!!(卒倒)となり自家発電しました…😂嬉しいお言葉本当にありがたいです😭💗短編も頑張ります🫡💖 (2023年1月27日 12時) (レス) id: ffc85090d4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて最高でした〜(;_;)(;_;) 武山様が書く雪代縁が大好き過ぎて何度胸が張り裂けそうになったか…短編集まで、書いてくれるのを考えてくれてらっしゃるだけで最高ですありがとうございました。何度も見返して雪代縁を堪能します(^^)/ (2023年1月26日 0時) (レス) @page50 id: d496fe5261 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:武山 | 作成日時:2021年6月24日 21時