87話 ページ39
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仕立てたばかりの煌びやかな羽織を潮風にはためかせ、わたしと雪代さんは船に乗るべく船着場の列へと並んでいた
「本当に大丈夫なのか、これ」
小声で雪代さんがわたしに耳打ちをする
前に並んでいるのは20人ほど。乗り場には予想通り警察が立っていて、乗り込む人々の顔を確認しているようだった
「堂々としてください!絶対大丈夫ですから」
警察から配られている雪代さんの人相画は結構お粗末なもので、黒眼鏡を外して白髪をどうにか隠せば顔だけではバレる心配は無さそうだった
自画自賛になってしまうが服も完璧な漢服が仕立てられたと思う
さしずめ周りからすればわたし達は何ら違和感のない清国の上流階級に見えているはずだ
なにせ、極めつけにこのわたし
雪代縁が女連れという情報はどこにも漏れていない
斎藤一の存在が懸念だったが、人誅を失敗した雪代さんに害はないと判断したのだろう。もう違う捜査に着手していると張から知らされた
「髪、出てないか?」
「…やけに心配性ですね?」
雪代さんの白髪は帽子に予め人口髪のカツラを取り付けて隠してある
ちょいちょい、と指で前髪を整えてあげるとくすぐったかったのだろう。雪代さんは少し目を細めた
「ここでバレて騒ぎになれば今度こそ貴様も共犯者になってしまうからな」
「ふっ、もう手遅れなので気負わないでください
あ、ほら。もう順番来ますよ」
いつの間にか前に並んでいる人数は5人程となっていた
怪しまれないようにわたし達は口を噤む
見ていた限り、そこまで入念にチェックされているような素振りはない。そもそもここに立っている警察の目的が雪代さんであるという確証もない。だってもうあれから1ヶ月以上経っているのだ
遂に前に人はいなくなり、視界に気だるげな警察官と船へと伸びる細い階段が見える
「…」
…気丈に振舞っていたが、いざその時が来ると不安で胸がドキドキする
大丈夫、絶対大丈夫。と自分に言い聞かせながら、雪代さんと腕を組み、警察官と顔を合わせた
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はな - 完結してかも何回も何回も読み直させてもらってます!いつか短編集も読めることを楽しみにしています🥺💗 (10月1日 23時) (レス) @page49 id: 5a141b2009 (このIDを非表示/違反報告)
武山(プロフ) - ちかさん» ありがとうございます😭‼️雪代縁よ…こうであれ…と欲のままに筆を走らせたのでそう言っていただけてとても嬉しいです😫💖短編集の方も欲望のままに書きなぐりますね🥺💗 (2023年1月27日 12時) (レス) id: ffc85090d4 (このIDを非表示/違反報告)
武山(プロフ) - 酒饅頭さん» うわ〜!嬉しいです!雪代縁を雪代縁っぽく喋らせるのめっちゃ難しいですよね…😂これほんとに雪代縁?となりながら夢主との掛け合いを書いていたのでそう言っていただけて安心しました!😭読んでくださりありがとうございます! (2023年1月27日 12時) (レス) id: ffc85090d4 (このIDを非表示/違反報告)
武山(プロフ) - ましゅまろぉさん» ありがとうございます!わたしもハマりたての時に探して え!?メリバしかねぇ!!!(卒倒)となり自家発電しました…😂嬉しいお言葉本当にありがたいです😭💗短編も頑張ります🫡💖 (2023年1月27日 12時) (レス) id: ffc85090d4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて最高でした〜(;_;)(;_;) 武山様が書く雪代縁が大好き過ぎて何度胸が張り裂けそうになったか…短編集まで、書いてくれるのを考えてくれてらっしゃるだけで最高ですありがとうございました。何度も見返して雪代縁を堪能します(^^)/ (2023年1月26日 0時) (レス) @page50 id: d496fe5261 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:武山 | 作成日時:2021年6月24日 21時