[雪代縁]放っておけない2

85話 ページ37

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自分の中の矛盾に葛藤している雪代さんに、なんて返すのが最善なのだろう


考えても考えても何も思い浮かばない



…いや、やはりこういうのは、最善の言葉ではなく自分の言葉を伝えるのが大切なのだろう




雪代さんと隣並び。わたしは外を眺めながら、ありのままの自分の言葉を口にした






｢これは持論なんですけど…、大事なものはいくつあったっていいと思うんです。




わたしも、雪代さんからもう離れたくないですよ。


母も父も、故郷も、わたしを構成してくれた服飾という文化も、雪代さんも。優劣なんてつけれないくらい全部等しくわたしの大事なものです｣



そう言い切ると、雪代さんはバツが悪そうにわたしから目を逸らし、下を向いた



｢…雪代さん…？｣




｢…だ｣




｢え？｣



聞こえない。耳に手を当てて雪代さんに近づいてみる




｢お前の1番は、俺じゃないと嫌だ…｣


｢はっ…｣



あまりの衝撃に思わず後退りをして壁に背中を預けた


今なんて言った？このお方


な、なんて仰られた？このお方！？




｢…は、はぁ！？
わがまま…っ、自分はくれないくせしてわたしには1番寄越せって言うんですか！？

とんだ暴君ですよ！カツアゲですよ！雪代さんの末っ子！｣



｢…｣




末っ子だったね








これだけボロクソ言ったら裏拳が飛んできても全くおかしくないのに、雪代さんはバツが悪そうな、すねた子供のような表情でわたしを見つめていた





｢…ダメかよ｣



｢……うっ…｣





ハタチ過ぎた年上の男を可愛いと思ってしまうなんて…
恐るべし弟属性




こんなに可愛く思っちゃうの、出会った頃では想像もつかなかっただろうな





屋敷に居候したばかりのツンケンした雪代さんを思い出し、ふふ、と小さく笑みが漏れる








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｢…仕方ないですね。わたしの1番、雪代さんにあげますよ｣




そう言って再び雪代さんの横に座り直すと、彼はその返答に安心したのか少し嬉しそうに目を伏せた







…可愛い。








｢…ま、雪代さんがそこまでわたしが大好きで、俺だけのAがいい〜！なんて言うのは少しだけ予想外でしたが…。雪代さんって可愛いところあるんです


い痛い痛い痛い痛い痛いっ！！！｣





｢調子に乗るな…｣






やっぱりあんまり出会った頃と変わっておられんわ と、アイアンクローを食らいながら思う夜更けだった

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