83話 ページ35
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「…説明しろ。」
お、怒ってらっしゃる…?
「ち、違うんですよ?なんか…声聞かれたらまずい状況で、でもわたし声出しそうになっちゃって…」
…なんか言葉に表すと余計意味わからなくない?なんか悪化してない?
「…ほう。」
「違う違うっ、違うんです!本当にやましいことは何も無くて…」
不機嫌そうな顔でいた雪代さんも、必死に弁明するわたしに気を良くしたのか、しばらくすると面白いものを見るような目でわたしを見つめていた
なんだ、この圧倒的敗北感は
「じゃあ、それが事実か証明してもらおうか」
「…? え、…っ」
どういう意味ですか?なんて尋ねる間もなく、雪代さんの右手がわたしの頬を覆い、親指が口内に侵入する
「…!?ちょ…、っと」
指先が優しくわたしの耳を撫で、口内に差し込まれた親指はなぞるように粘膜を刺激する
抵抗しようと噛んだり舌で押し出したりしてみたが、余計に雪代さんの指と絡まってなんだか逆効果だ
「…ゆっ……」
喋ろうとしても上手く喋れない。確か蒼紫さんの時もそうだった
でも、あの時と全然違う
なんか、なんかこれ…、変だもん
「…っ、ん、」
もしかしてこの甘い声、自分の声?
できればそうでないことを願いたい
聞きなれない嫌な声と水音が、浴室内に響く
暑い。身体がじんじんする。なんだかわたし、変だ
頭がくらくらして、これはいけない。ふらり、と身体が傾いて沈みそうになったのを、雪代さんがやっとわたしの口元から手を離し受け止めてくれる
そのままおぼつかない手で雪代さんの背中に手を回し、ゆっくりと呼吸をした
布1枚越しに雪代さんと密着している
正直物凄く恥ずかしい。でも、そんなことよりも何よりも、この男に一言文句を言ってやらないと気が済まない
「…ゆ、雪代さんのバカ…!死ぬかと思った!」
潤んだ目で雪代さんの顔を睨みつける
「蒼紫さんとはこんなんじゃないし、それも最初から分かってるくせに…っ」
「大体、もとよりわたしは雪代さんしか…っ!?」
__なんの前置きもない、突然の事だった。…いや、わたしが気付いていないだけで、前置きはあったのかもしれない
頭に浮かんでいた沢山の文句の言葉は、現状把握にいっぱいいっぱいで全て頭から零れ落ちていってしまった
身体と身体が密着する。背中に手が回る。お互いの濡れた髪から雫が滴る。それ以上、何も考えられなくなる。
噛み付くような、貪るような。少しだけ乱暴な、2回目のキスだった
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はな - 完結してかも何回も何回も読み直させてもらってます!いつか短編集も読めることを楽しみにしています🥺💗 (10月1日 23時) (レス) @page49 id: 5a141b2009 (このIDを非表示/違反報告)
武山(プロフ) - ちかさん» ありがとうございます😭‼️雪代縁よ…こうであれ…と欲のままに筆を走らせたのでそう言っていただけてとても嬉しいです😫💖短編集の方も欲望のままに書きなぐりますね🥺💗 (2023年1月27日 12時) (レス) id: ffc85090d4 (このIDを非表示/違反報告)
武山(プロフ) - 酒饅頭さん» うわ〜!嬉しいです!雪代縁を雪代縁っぽく喋らせるのめっちゃ難しいですよね…😂これほんとに雪代縁?となりながら夢主との掛け合いを書いていたのでそう言っていただけて安心しました!😭読んでくださりありがとうございます! (2023年1月27日 12時) (レス) id: ffc85090d4 (このIDを非表示/違反報告)
武山(プロフ) - ましゅまろぉさん» ありがとうございます!わたしもハマりたての時に探して え!?メリバしかねぇ!!!(卒倒)となり自家発電しました…😂嬉しいお言葉本当にありがたいです😭💗短編も頑張ります🫡💖 (2023年1月27日 12時) (レス) id: ffc85090d4 (このIDを非表示/違反報告)
ちか(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて最高でした〜(;_;)(;_;) 武山様が書く雪代縁が大好き過ぎて何度胸が張り裂けそうになったか…短編集まで、書いてくれるのを考えてくれてらっしゃるだけで最高ですありがとうございました。何度も見返して雪代縁を堪能します(^^)/ (2023年1月26日 0時) (レス) @page50 id: d496fe5261 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:武山 | 作成日時:2021年6月24日 21時