[雪代縁]放っておけない2

65話 ページ17

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話に聞く限り、神谷薫を自分のせいで死なせてしまったと責任を感じた抜刀斎は、落人郡という埒外の集落…人生を捨てた者の最終領域に流れ着いていた




雪代さんの人誅はもう少しで完成する



でも、それだと困る。抜刀斎がこのまま事切れてしまう前に 雪代さんにどうにかして日記帳を渡さないといけないのに…





皆が寝静まった頃、1人で道場の廊下をウロウロしながら考え込んでいると、曲がり角を曲がった先の庭の方から ｢ぐす｣ と女の子のすすり泣く声が聞こえてきた





｢…？｣





恐る恐る足音を立てないようにして声の聞こえた方へ近寄ると、操ちゃんが膝を抱えて静かに泣いているのが目に映った









｢…薫さん……｣





｢……｣







胸がズキリと傷んだ


ダメだ。わたしは

ここへ来て1度も周りの人達のことを考えれていなかった

わたしは雪代さんが神谷薫を殺していないことを裏付ける確固たる理由を知っているけれど、ここの人たちは知る由もない。ここの人たちの中では死んでいるんだ。神谷薫という、誰からも愛される人望の厚い少女は









…どうする？話すべきか？


神谷薫は恐らく生きている と


そうしたら抜刀斎も再び立ち上がるはずだ









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でも、そんなのは明らかな雪代さんへ対しての裏切りだ









一体、どうしたら…






とりあえず、泣いているのを盗み見るのは駄目だ、と来た道を戻るべく後ろへ向こうとした瞬間、誰かに口元を手で覆われた





｢…ん、む……！？｣




｢声を出すな｣





暗くてよく分からないけど、背の高さ、声色から察するに蒼紫さんだ






｢…っ｣



息！



息ができないですが！




離してください！と言わんばかりに蒼紫さんの腕を両手で掴んで抵抗するけれど特に意味もなく。



息苦しいのは察してくれたのか、蒼紫さんが手を少し下にズラし、親指をわたしの下唇に添わせ そのまま口内に短く差し込む



｢ぁ…、うぅ……｣




成程、呼吸は出来るけれど 上下顎の奥歯の間に親指を挟まれてると上手く発音ができない。これじゃあ大声も出せない




どこでそんな技を身につけるんだ…。と恨みがましくギリ、と蒼紫さんの親指を噛んだ









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大人しくそのまま蒼紫さんが誘導する方へ着いていけば、物置のような空き部屋に2人きりになる

一体わたしに何の用だろうか？


皆の前では話しにくい内容なのだろうか？








｢……あの？｣




｢お前も神谷薫はまだ生きていると思うか？｣






｢…え？｣





予想外の問いかけに、思わず耳を疑った

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