好きになっちゃいけない人【条野採菊】

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『震えてなんか……』


「……」




条野さんは黙り始めた。
もう、私に幻滅したに違いない。私は貴方に嫌われたくないのに＿＿



咄嗟に云おうとした言葉が、





『私は、条野さんのことが…っ！』







＿＿＿＿＿＿＿＿＿〃好きです〃。





其れを云う筈が、何故か云うのを辞めてしまった。
否、これは云うべきではない。




彼には想い人が居るから。


＿＿＿＿＿でも、云ってしまえば、楽になるんだろうか。

振られて、潔く諦められるのかな、








私は決心着いた。










「私が、何ですか？」




『………＿＿＿＿私は、条野さんのことが好きです。』




「……は？」







い、云ってしまった。
私は彼の表情を見ずに下を向く。振られる事は分かっている為、どうしても顔が見れない。



それでも、涙は零れてしまいそうで溜まらなかった。



早く振られて気持ちをスッキリとしたいのに……
でも、まだこの関係がずっと続いていたい私の欲が抑えられなかった。








「…………私は、」




条野さんが何かを伝えようとした直後、






『すすすすすみません！今のナシ！』



「はい？」




『何も言ってません！何も条野さんは聞いてません！はい、終わり！』







私は思わず焦り、先程の言葉を無しという言葉で消そうとした。
彼も私もお互い困っている状況に至ってしまうわけで＿＿








「………じゃあ何故、涙を流しているんですか？」




『！？』




無かった言葉が涙のせいで彼に映ってしまった。
私は直ぐに否定する。




『これはっ！違くて…！』




「違くありませんよ。」






そう云って彼は顔を近づけて、流れていた涙を優しく拭った。

……そんなことされたら、もっと好きになってしまう。
ぐるぐると頭の中が混乱していく。







『あ、ちょっと思い出して泣いただけで……』




「………私を何だと思っているんです？」






優しい声で話す彼に目を向けると、困ったような笑顔で此方を見ていた。







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