好きになっちゃいけない人【条野採菊】

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『…え、両想い！？』




「ええ。」




嬉しそうに肯定する彼に、私は驚いてしまった。

相思相愛って事は、両想いということ。
私は全然気付かなかった。きっと彼には好きな人が居るかもしれないという心の奥底で思っていたが、真逆、両想いなんて＿＿＿＿＿








『そ、そうなんですね…』








これ以上言葉が出てこない。



これ以上言葉が出るならきっと私は勢いで好きだと言ってしまうから…





其れで振られるのは嫌だ。
少しでも彼との時間を大切にしたい。







「何か考え事です？」





『あっ！！いいえ、何も！！！』







きっと今の私の表情はとても酷いんだろうな。

彼には見えていないことに安心したが、彼は私の事をなんて思うんだろうか。








「Aさんは好きな人は居るんです？」






彼の言葉で泣きそうになった。



私は、好きな人居ますよ。






貴方が好きなんです。










そう言えれば良かった。
でも言ってしまったら、彼と一緒に居られる時間が無くなってしまうかもしれない。



条野さんが好きだからこそ、条野さんには幸せになって欲しい。





例え、片思いでも＿＿＿＿










『私には好きな人なんて居ませんよ…！良いなぁ、両想いなんて』





違う。


其の言葉が言いたいんじゃない。







「そうなんですね」



『あはは……』






駄目だ。これ以上話進められない。










歩いていた足を止め、下を向く。
泣いちゃ駄目だと思うけど、先程の彼の言葉に刺されて前を向いて歩けない。




先に本部へ行ってください、＿＿と云おうとした途端に後ろから、














「む、＿＿＿＿＿条野とAか？」






聞き覚えのある声がして振り向くとそこには、鐵腸さんが立っていた。










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