オカミサマその10 ページ8
「えっ…家を、売る、とは…」
「そのままの意味だが?このままでは僕達は生活できない。」
Aは一瞬呆然とした。
いえをうる?なんの事だ。
オカミサマ事件(命名A)の翌日。
何とか生きて杜王町まで帰ってくることができた2人は、家の中で口論をしていた。
先程の「家を売る」という言葉の意味を理解した途端、Aは必死に抗議した。
「いや簡単に言ってますけど!!どっちにしろ家がなかったら生活できませんよ!!」
「康一くんの家に居候させてもらおうかと考えてるんだが…」
「いや私女子高生!花の!さすがに同じ学校の男子に泊めてもらう訳には…」
そう、Aはもうひとつ忘れていた。
本来なら、露伴はオカミサマの原稿を康一の家で完成させるのだ。なぜなら破産しているから!
「じゃあ君は由花子の家に泊まらせてもらったらどうだい?」
「いやなんで居候は決まりなんですか!何とかならないんですかぁ!」
(ハッそうだもし由花子さんに無断で康一くんの家に泊まる…いや入ったりしたら……)
想像するのも恐ろしい…
Aは顔を青くしてぶるりと震えた。
その時、露伴のズボンのポケットからスマホのバイブ音が聞こえてきた。
「はい、もしもし?……あぁ、我ながら自信作だ。…あぁ。………あぁ、………分かった。」
「誰からですか?」
「お節介の編集長だ。頼んでもないのに儲けがいくらとか教えてくる…で、どうやら今回は印税が高くつくらしい。」
「と、いうことは…?」
「家は売らなくて済みそうだ。」
その言葉を聞いて、Aは飛び上がらんばかりに喜んだ。
「やった!よかった!グレート!!」
…思わず仗助の言葉を真似てしまった。
露伴はあからさまに嫌そうな顔をして言った。
「やめろよ。君は可愛いんだからそういう言葉遣いは似合わないよ」
「…先生って、モテますか?」
「なんだよ藪から棒に」
唐突に露伴の口から漏れた「可愛い」という単語に驚いたあと、Aはジト目で彼を睨んだ。
「全く、女の子に簡単に可愛いとか言いませんって普通…」
「え?なんて?」
「なんでもないですー!家を売らないことになって良かったですね!!」
Aはそれだけ言い残すと2階の自室に篭ってしまった。その背中を見てやっと露伴も、自然と口から「可愛い」なんて単語を漏らしていたことに気づいた。
(いや、だがこれはなあ…)
恋とか言うよりは、どっちかと言うと父性だろ、と思う。後に、露伴は次の漫画のネタを考え始めるのだった。
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←オカミサマその9
23人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
四葉 - 面白いですね 更新待ってます 頑張ってください (2021年3月31日 12時) (レス) id: 0e6ae3a87b (このIDを非表示/違反報告)
粉雪(プロフ) - とても面白かったです!更新待ってます (2020年4月11日 16時) (レス) id: e56b1830f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:林檎凛子 | 作成日時:2020年2月27日 19時