オカミサマその3 ページ2
｢いらっしゃいませお客様。ポイントカードをお持ちでしたらお見せ下さい。｣
｢ないよ。作る気もない｣
｢今でしたら1回の買い物につき5パーセントのポイント還元。身分証の提示だけで、タッチパッドを2分程度操作していただければすぐにお作りできます。後々のことを考えても、非常にお得でございます｣
｢要らないって言っただろ？その〈記憶したマニュアルそのまま読みました〉みたいな接客、時間の無駄だからやめて欲しいなァ〜｣
｢申し訳ございません、お客様｣
Aが露伴の角のある言い方にヒヤヒヤして店員を見るが態度を改めるわけでもなく。
なんというか、杓子定規。イマイチ〈マニュアル通りの対応〉が抜けていないのが露伴には気に食わないが、とにかく会計は進む。
レジに表示される金額が、あっという間に5桁を超える。払ってしまえば、夕食はカップラーメンかなにかになるだろう。だとしても、1度興味を持った本を買わずに帰る選択肢など、露伴の中には存在しないのだが…本日の趣旨は別である。
｢ああ、それで…ちょっと〈領収書〉を切って欲しいんだが。レシートじゃなく手書きのやつ｣
｢畏まりました、お客様。宛名は如何致しますか？｣
｢〈オカミサマ〉で頼む｣
｢はァ…おかみさま、でございますか？｣
｢そうだって言ってるだろ。カタカナでいい。プロ野球選手がファンの子供のためボールにサインをしてやるみたいに、さっさとな｣
どうもキョトンとした様子の店員に、露伴は内心
(オイオイオイ、ガセじゃあないのか)
とか
(坂の上誠子…まさかぼくを金銭面で戒めるために一芝居打ったんじゃあないだろうな…だとしたら漫画のネタで肩透かしを食らったことになる。そこは許せない)
とか、そんなことを考えていた。
騙されて高額な買い物をするよりも、｢面白そうなネタが嘘だった｣という可能性の方が、よほど露伴の心を掻き毟る。
しかし…それは、すぐさま杞憂であるとわかった。
｢―――お客様、おめでとうございます｣
｢え？｣
｢お客様、当店では創業以来オーナーの意向で｢縁｣を大事にしてまいりました。
｢円｣を稼ぐのは、来店してくださるお客様が紡いでくれる｢縁｣だと……。
そこで当店では代々、
｢硬貨または紙幣と同じキリ番｣のお客様をレジカウンターにて記録しております。
1人目と、5人目、10人目…1000人目や5000人目、と……｣
｢………｣
｢貴方様は｢1万人目｣のお客様。今回のお買い物は、｢無料サービス｣とさせていただきます。｣
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四葉 - 面白いですね 更新待ってます 頑張ってください (2021年3月31日 12時) (
レス) id: 0e6ae3a87b (このIDを非表示/違反報告)
粉雪(プロフ) - とても面白かったです！更新待ってます (2020年4月11日 16時) (レス) id: e56b1830f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：林檎凛子 | 作成日時：2020年2月27日 19時
