和の心膜炎 ページ16
翔side
ピンポン...ピンポン...
再び血圧が下がる音。
全身の血液量を増やすために輸液や輸血を指示する。
「痛いな...ごめんな...」
スタッフから麻酔入りシリンジを貰い胸に針を刺す。
局所麻酔で効き次第処置。
胸の痛みに比べたらどうってことないだろうけど痛いはずだから声掛け。
でも、その声に反応が無くて聞こえるのはモニターの警告音。
「....やります」
エコー装置を胸もとに当てて刺す箇所を消毒する。
モニターに表示される白黒の画像。
消毒した部位を切開しそこからワイヤーをいれる。
これを入れる事でスムーズに液体を排液出来る。
副「ん、大丈夫だよ、そのまま...」
隣にいる医者の声を聞きながら手を進めていく。
カテーテルを受け取り、ワイヤー内に挿入する。
それと同時にスタッフが容体の数値の報告がされる。
モニターに白いチューブ状のものが映りカテーテルの位置を確認。
延長チューブをカテーテルに追加しチューブに注射器を挿入。
スーッと注射器の押し子を引く。
数秒して注射器に入る液体。
「よしっ...」
ある程度入り、2本目に差し替える。
引いても量が増えない事を確認して挿入したカテーテルやチューブを取る。
この時に明らかな異常が無ければそれで処置が終了する。
スルスルと抜いていき先端が抜けて血液が滅菌布に触れて目立つ赤いもの。
「...」
止血をしながら容体を確認する。
合併症である不整脈や急激の脈拍や血圧低下は確認されない。
「...終了です」
全身の力が抜ける感覚。
素早く手袋を捨て和の頭を撫でる。
「良く頑張ったな...お疲れさま」
処置が無事に成功してあれだけ響いていた警告音も落ち着きを取り戻した。
そっとマスクを酸素マスクに変更する。
まだ油断は出来ないけど、術後は絶対安静だからしばらく抱き締めることも出来ない。
規則正しく曇る酸素マスクに安心する。
少しながらも死ぬ可能性もゼロではなかった。
良かった、本当に。
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作者名：Lima
| 作成日時：2020年1月1日 1時
