冷たい心情（翔）リク ページ35
翔side
先輩「その症状は...」
その言葉に静かに頷く。
救急隊から連絡された状態を聞いて搬送は決めたものの...
状態が悪すぎる。
トラックとの衝突で頭を強く打った5歳の女の子。
1人で交差点を渡っていたって。
おそらく親御さんが来る前に手術をすることになる。
こんな小さい子が...
考えさせられる。
先輩「痛いね、もう少し頑張れよ。」
搬送されてきた女の子。
頭をガーゼで覆われているが血液が染み込んでいる。
すでに挿管がされ、先輩の呼び声には反応しない。
痛いはずなのに身体の力が抜けベットにいる姿は胸に来る。
モニターを見ると徐々に血圧が下がっていて脳内で出血が増えていることが伺える。
手術の準備をしてもらっている間に脳のレントゲンを撮る。
「まじか...」
予想以上に出血をしていて、血液が脳内を圧迫している。
溜まっている血液を外へ出して脳の負担を少なくする。
自然と手の震え。
自分の腕にかかっている。
もしかしたらこの子の人生を左右するかもしれない。
液晶に表示されたレントゲン結果を見て思う。
先輩「...俺もいるから、な？できる限りやろう。
脳外科からも応援出してくれるから。」
「はい。」
自然と身体から力が抜けていく感覚。
＊
先輩side
『このまま黙って見てろって事ですか！』
翔くんに掴みかかる女...いや母親。
"無事に手術成功しました"
その報告を望んでいたはずだった。
しかし現実はそう上手くいかなかった。
溜まっていた血液を外へ出すことには成功した。
だけど...
手術が終わっても状態は良くならなかった。
再度レントゲンすると脳内の出血。
再び出血が確認された。
おまけに脳の腫れが酷い。
ここまで来るともう開頭することが出来ない。
翔「...覚悟が...必要です。」
母親にそう答える翔くん。
手術は翔くんが悪いじゃない。
誰がやっても...同じ結果だった。
すでに開頭された状態で諦めの気持ちもあった。
だけど。
『やるべき事はやりたいです』
そう言った翔くん。
1ミリでも可能性があるならそれを信じたい。
たとえ、ダメだったとしても。
救えるならって。
『...そんな...』
翔くんのその言葉を聞き泣き出す母親。
翔くんから離れ娘さんがいるベットに縋り付く。
「１回、離れよう。」
そう伝え、病室から出る。
少しでも娘さんと時間を過ごして欲しい。
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作者名：Lima
| 作成日時：2019年8月24日 23時
