「わがこころなきためいきの」 ページ3
指に少々乱暴とは言え接吻し、俺をさも憎らしそうに見下す表情にぞくぞくしたものを覚えたのは恐怖によるものか、背徳感によるものか、劣情…いや、おそらく毒だ。
俺の心にもない溜息が、お嬢様の垂れた濡れ羽色の髪を僅かに揺らした。毒を盛るためとはいえ、ここまで軽蔑している執事に接吻するような箱入り娘は、いずれ悪い大人に欺かれ、傷ついて仕舞いそうだ。…若しくは、それほどまでこの娘は人肌恋しいというのか。
メデュラは性格はどうあれ、造形は綺麗だ。少なくとも俺は主以上に美しい人を見たことがない。汚物や多足類に注ぐ視線の方が余程慈愛に満ちている…と断言できるような表情だとしても、どうしようもなく心を奪われてしまう。
メデュラが指先から牙を抜く。指先からつう、と流れる緋い体液が、メデュラの口に這入り綺麗な少女の貌を歪ませた。どうやら血を飲む趣味はないらしい。気持ち悪そうにハンカチーフで口許を拭うと、清楚な風鈴草の刺繍が俺の血で染まった。
たらたらと流れ出る血液が気持ち悪い。俺は主人の手に握られた白いシルクの布を乱暴に奪う。指に強くあてがえど血は垂れ流され、お嬢様の大切なハンカチーフがゆっくりと濡れていく。体躯中に毒が迴る感覚。血は直ぐには止まらないだろう。メデュラが大好きな、今は亡き彼女の兄が買い与えた主人の宝物。俺は今、それを汚してしまっている。カンパネラが見たらショックを受けるか…いや、あいつは穏やかに見えて強かだから、そうなると思ってた…とか笑いながら言いそうだ。少なくとも、メデュラの性悪なところは完全に兄似だ。
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of3107uyui(プロフ) - はいいろトムちゃんさん» 初投稿なのにこんなに早く反応をいただけるとは…しかも美しいと…綺麗に描こうとしている身としては嬉しすぎます！ありがとうございます！ (11月19日 21時) (
レス) id: 046d413ab4 (このIDを非表示/違反報告)
はいいろトムちゃん - コメ失礼します。こんなに表現が美しい小説占いツクールに来て初めて見ました！！更新楽しみにしてます！！ (11月19日 14時) (レス) @page1 id: 58e4ddea38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みかなべ | 作成日時：2023年11月19日 13時
