検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:2,588 hit

不完全な闇 ページ9

「闇魔法って、知ってる?」

闇、魔法?

聞き覚えの無いその単語に、アタシのちっぽけな脳味噌はフル回転する。

でも、この国には火、水、風の三大魔法しか無い筈……昔読んだ古い文献にも確かにそうあった。

――【おおよそ三千年前に創造主によって一人の王と共に創られたこの雪ノ国は、当時ただ強い魔力の篭もった桜と降り続く雪しか無く、その為創造主は世界をより良くするために、火、水、風の三大魔法をその王に授け、以来その魔法は今の世代まで受け継がれている。】

「うん、そう、大体それであってるよ。でもね、創造主は王のみを創り出した訳じゃない。王のみなら長くて九十年程で人類は滅亡する事になるだろう?」

「……王女?的な?」

「ポンピン! 創造主は心がちょっとひん曲がっててね。王が四苦八苦するのが見たくてその王女に巨大な闇魔法を授けたんだ」

一人じゃとても制御仕切れないような、ね。

闇魔法って言うのは三大魔法のどれよりも圧倒的に強いけれど、その代わり使い手の精神によって大きく左右される。

王女は結構精神不安定な風につくられてたから、度々暴走してたなぁ。

「まぁ昔話はここまでにして、君にはその闇魔法を適正として授けたんだよ」

「って、言われても……」

正直よく分からない。今まで十三年生きてきた中、そんな魔法聞いた事も無いし、そんな大量な魔力を感じた事も無い。

「却下」
「じゃあ!」

「じゃあ?」

ゆらりと瞳を合わせると、この人の目の色がいつの間にか蕩ける様な、吸い込まれそうな金色に変わっている事に気付く。

「……人気者に、なりたい」

人気者とまでは言わない。一人の大事な友達が出来たら、自分を骨の髄まで愛し尽くしてくれる人が出来たら、

「ふぅん、分かった」

明らかに興味なさげにそう言い放って、手に嵌められた手袋を口に咥えて抜き取る。

「ちょっとは面白い子かなと思ったけど、期待外れだったみたいだ」

二回目の意識が離れる寸前そんな言葉が聞こえた様な気がしたけれど、アタシは耳を塞いだ。

星屑は重ねる→←愛されたがりの再構成



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (8 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
4人がお気に入り
設定タグ:ファンタジー , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

西夏(プロフ) - 綺麗な文ですね! (2018年8月11日 13時) (レス) id: 66c6e8cd96 (このIDを非表示/違反報告)
ましら(プロフ) - やはり、うたちゃんの文章は、日本の匠に作られたとても繊細で、太陽の淡い光を受けて佇んでいる硝子ザ細工が如く美しいよ。うたちゃんの文章をありがとう! (2017年1月30日 16時) (レス) id: 512c5a6245 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:暁月そら | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年1月29日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。