VI ページ6
真っ暗で何も見えない。
＿＿＿どこか遠くの方で狼の遠吠えが聞こえた。
容赦なく寒さと空腹が体を襲う。
「怖い…寒いよ。」
転んだその場で倒れこむ。
何とか這いつくばって近くの木に背を預けた。
風がでてきた。斬りつける様に木々の間を縫った風が少女の体に当たる。
あまりの空腹に昼間食べた様に、雪に手を伸ばし口へ運んだ。
2、3口食べた後余りの冷たさに少女は食べるのをやめた。昼間とは状況が違う。
暗い森の中で気が遠くなる様な時間を過ごした。
すると、どうだろう。
頭がぼーっとしてきて体は内側からじんわり暖かくなる様だった。
「パパ…、パパ。」
強烈な眠気とともに下がる瞼。
でもなんだかこのまま寝てはいけない気がして、
しばらく少女は眉間にグッと力を込めていた。
だがすでに瞼を擦る手の力も残っていない。
私パパ、を迎えに行かなきゃ。
眠気に負けて目を閉じた時だった。
時刻は真夜中。狼の出る時間だ。日付が変わった。
「A・スタンリー。」
突然呼ばれた自分の名前は、朧げな意識の中で父の声と重なった。
“A、寝てはいけないよ。”
＿＿＿父親の優しい声がした気がした。
凍える睫毛を震わせて、ゆっくりと目を開ける。
「やぁ、おチビさん。御機嫌よう。」
いつの間にか現れた
男はしゃがみ込んで少女の顔を薄い笑みを浮かべて覗き込んでいた。
虚ろな瞳で少女は彼を見ると、ふにゃりと笑みをこぼし掠れる声で呟いた。
「春だ。春みたい。」
目の周りと唇は青黒くなっており、血の気の引いた青い顔で笑う子供の姿は痛々しい。
「春？」
男は眉を寄せて聞き返したが、直ぐに大方寒さで頭がイッてしまったのだろうと思い
「嘆かわしいねぇ」と溜息をこぼした。
まるで殴られた様に酷い色をした目の下を長い人差し指でツーっと、男は顔をしかめながら撫でる。
「…春だっ、らあったか…のに。」
唇は固く、音にならない声もあった。
震える小さな手がが男の頬を這い、男と同じように目の下に触れる。
黄緑色の輪光、＿＿＿若草色のその瞳越しに少女は春を思い起こしていたのだ。
「よ、せいさん、来てくれた…パパを、たす、て？」
白目に触れてもまだ這ってくる小さく冷たい手を男は握り、剥がすと立ち上がった。
「はいはい、分かった分かった。」
カチャリ大鎌を構える。
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お餅 - いつの日かの更新再開を勝手ながらお待ちしております！諸事情色々ありますものね。季節の変わり目なので、お体に気をつけて、ご自愛下さいね。では。 (2019年9月7日 18時) (携帯から) (
レス) id: 9ca718c93e (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - え？、終わり？…ですか？残念です…。 (2019年9月7日 13時) (携帯から) (レス) id: 9ca718c93e (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - お餅さん» ありがとうございます。他の物も気に入って下さったなんて、嬉しいです！ご期待に添えるようにこれからも頑張りますね！ (2019年5月24日 23時) (レス) id: 6e02d7f948 (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - コメント返しありがとうございます！葬儀屋の秘密二作も読ませていただきましたが、実写かアニメのように鮮明に画が頭に浮かび素晴らしかったです！凄い文才ですね！更なるご活躍期待してます！ (2019年5月24日 19時) (携帯から) (レス) id: 9ca718c93e (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - お餅さん» コメントありがとうございます！なかなか手が空かず更新は遅いかと思いますが、そう言って頂けると私も書くのが楽しいです。ありがとうございます！ (2019年5月21日 19時) (レス) id: 6e02d7f948 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろん | 作成日時：2019年5月14日 23時
