V ページ5
運が良いことに、翌日のその日の昼は雪が降らなかった。
それどころか、近年稀に見ぬ季節外れの陽気にみまわれた記録的な異常気象だ。
森の中は相変わらず閑散とし、冷たく深い雪に覆われていたが薄金色に差し込む日差しにキラキラと辺り一面が輝いていた。
夢の様な光景を一日中見つめながらも、少女はしばらくすると父親の体から離れ森の中を歩いていた。
彼女は賢い子供だ。
まだまだ親の愛情と手をかけて育てなければならない年頃である彼女が、
もう動かないとはいえ親を置いて1人果てのない銀世界を歩き回ろうと思い立つのはとても勇気がいる。
かなり森の奥にいると言うのは、なんの音も辺りから響いて来ない事から直ぐに分かった。
ここに居ては守ってもらった私まで死んでしまう。
冷たくなった父親の手を握って半日待った。
______が、誰も来ない。
「パパ…、パパ。絶対にわたしお迎えにくるからね。待っててね、約束だよ。約束するからね。」
ポロポロ大きな瞳から涙を零しながら、幼い頃い声色で父親の手を握り、呼びかけた。
乱れた髪を小さな手で梳いて、いつも通りの髪型に戻す。
体を目一杯の力で何とか真っ直ぐに仰向けにし、両手を腹の上に組んで乗せた。
凛々しい顔立ちも青白く死人の顔そのもので、それを見た少女の目から一層涙が溢れる。
「ふぐっ…う、ゔぁああ〜、あ"〜！」
顔をぐしゃっと歪めて嗚咽しながら唸り声の様に少女はついに悲痛な声を上げた。
泣きながらおもむろに雪を掴みぎゅっと握り締め固めるとそれを父親の額に当てる。
べっとりとこべり付き変色した血が雪に当てられ溶けていく。
溶けた血を自分の厚手のコートの袖で拭き取ると父親の体にゆっくりとぎこちなく抱きついた。
「………。」
何を考える訳でも無いが、水漏れした配管から出る水滴の様に涙は一定のペースで流れ続ける。
深い悲しみが少女を襲った。
しかし彼女は賢い。
まだ幼いというのに、それに気づかぬフリをして声を上げて泣くのはもうやめた。
「＿＿＿約束するよ、わたし。」
ぎゅっと一層力を込めたあと父から体をはなした。
押し込めた気持ちが涙になって溢れ続けたが、少女は当てもなく森を歩き回った。
やがて、日が暮れて夜が来る。
「は、は…。」
呼吸が短く足が雪に取られるのにそう時間はかからなかった。
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お餅 - いつの日かの更新再開を勝手ながらお待ちしております！諸事情色々ありますものね。季節の変わり目なので、お体に気をつけて、ご自愛下さいね。では。 (2019年9月7日 18時) (携帯から) (
レス) id: 9ca718c93e (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - え？、終わり？…ですか？残念です…。 (2019年9月7日 13時) (携帯から) (レス) id: 9ca718c93e (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - お餅さん» ありがとうございます。他の物も気に入って下さったなんて、嬉しいです！ご期待に添えるようにこれからも頑張りますね！ (2019年5月24日 23時) (レス) id: 6e02d7f948 (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - コメント返しありがとうございます！葬儀屋の秘密二作も読ませていただきましたが、実写かアニメのように鮮明に画が頭に浮かび素晴らしかったです！凄い文才ですね！更なるご活躍期待してます！ (2019年5月24日 19時) (携帯から) (レス) id: 9ca718c93e (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - お餅さん» コメントありがとうございます！なかなか手が空かず更新は遅いかと思いますが、そう言って頂けると私も書くのが楽しいです。ありがとうございます！ (2019年5月21日 19時) (レス) id: 6e02d7f948 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろん | 作成日時：2019年5月14日 23時
