箱庭 (ページ10)

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発見ページ10

倉庫街付近のアパートに到着すると警察車両が何台と一つの車両が捨て置かれていた
車両に至っては警官が中を隅々まで調べあげているのであれが容疑者の乗っていた車であることは間違いない

『伊吹さん、見つかりました?』

「いや、此処にはいません。……ったく、何処行ったんだあいつ」

ぐるりと倉庫街を一週してみたが志摩が伊吹の姿を見つけることはない。Aも志摩の的確な伊吹という人物の目印を元に探してはいたが残念ながら見つからない

建物の中に入った可能性もあると二人はバイクから降りヘルメットを外す。すると、Aの耳に小さく物が落下する音と、誰かが気勢荒く叫ぶ声が届いた

『あの、志摩さん。伊吹さんって結構気勢の荒い人ですか?』

「え?そう、ですね…気勢というか、野性的というか」

しかしそれが今何の関係がと声にするより早くAがこっちですと倉庫の一つに飛び込んでいった

慌てて志摩も彼女の後を追うと商品らしき部品が散乱とした如何にも何かがあった状況が待ち構えていた

「おい、伊吹!」

名前を呼んでみたものの返事は聞こえてこない。既に他の場所へ移動したか、それとも。と志摩が思案しているのを他所にAは散らばった商品を踏まないように慎重に奥へと進んでいった

背中を商品棚に預け、足音ひとつ消した彼女が一度志摩を見る。こっちだとその瞳が物語っていた

その背中に続くと開けた場所には両手を上げて跪く容疑者の安本とその背中に何かを押しつけている伊吹の姿があった

「もう志摩ちゃん遅いよ～。こいつ撃っちゃっても良いよね?」

銃口を押し付けられていると思っている安本は助けを乞うように伊吹のいる方向を見上げている。息が荒く、その音は此方までよく届く

Aは目の前の志摩の背中を見る。彼のバディに対してなんと答えるのか、純粋に気になっていた

「……銃を下ろせ。相手は降伏している」

伊吹が小さく息を呑んだのは聞き間違えではない

「轢かれた、殺されかけた、正当防衛だよ?」

「発砲の要件に叶っていない」

「規則なんてどーでも良くない?誰も見てない、防犯カメラもない、此処に居んのは俺と志摩ちゃんとこの糞野郎だけだ」

つんつんと銃口を男の背中に押しつける伊吹の言動に違和感が生じた
伊吹は、後ろにいる彼女に気がついていない?

思わずそちらを振り返りそうになったが安本が助けて下さいと命乞いをし始めたおかげでそちらに余念を向ける暇がなかった