箱庭 (ページ44)

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日常のワンシーンページ44

本日の業務である一機捜のヘルプが終了し、引き継ぎの為に本部へ戻ると入庁したのか目の前で桔梗さんが受付からエレベーターホールへ颯爽と歩く後ろ姿を視認できた

携帯片手に電話しているので挨拶は後の方がいい。けれどそうなると盗み聞きを肯定することにもなる。うーん、仕方がないか

「ありがとう。私もだーいすき」

電話の相手はゆたかくんだ。元気にしてるといいけどなあ。
と考えていると何故か左手に立つ伊吹くんがそわそわと浮き足立つ

顔を見上げると不思議なことににやにやしていた。なぜだろう

「はい。お仕事頑張ります」

疑問に思っていると通話を終えたのか携帯を仕舞う桔梗さんにおはようございますと挨拶する
まさかいるとは思っていなかったのかびくりと桔梗さんの肩が跳ねる

「ただ今戻りました」

「………お疲れ様」

丁度よく開かれたエレベーターに全員で乗り込み目的の回数の記されたボタンを押す
ひとつ、ふたつ、点灯したボタンに志摩さんが訝しげな視線を寄越した

「ここで降りるのか?」

『あ、はい。ちょっと頼まれたことがあって…申し訳ないんですけど、引き継ぎの方は任せてもらって良いですか?』

「頼まれたこと?」

じっとりとした視線が隣から飛んでくるので笑って誤魔化してみる。もちろん、桔梗さんは流される人ではないので効かないけど

「A、あなたまさか＿」

『お二人ともまた後で!』

チーンと鳴った音に合わせて外へ逃げ出せば背後からため息と二人の驚いた声が聞こえた
追いかけるつもりはない桔梗さんにほっと息を吐きつつ目指す場所はひとつだけ

人の出入りが激しい部屋を通り抜けてしん、と静まり返った会議室へと足を踏み入れる

「おー、来たかA」

「久しぶりだなあ……ってもそんなに日は経ってないか」

『桜庭、柳。久しぶり』

中央付近の机を立ち上がり出迎えてくれた元同僚たちに軽く挨拶をしてから彼らの側へ赴く
机上には地図と何枚もの書類、そして開かれたノートパソコンが置かれている

地図には赤丸と書き込まれたメモ。線が引かれている

「例の人身売買組織が動き出した」

『みたいねぇ…』

「問題なのはそれだけじゃない。やつら、マフィアと取引したのか、武器を所持していた報告が上がってる」

「これ以上、拉致者が発生する前に動きたいのがこっちの現状だ」

長期戦となった案件。けれど焦って取り逃がせばそれこそ2年前と変わらない。机上のものを全て纏めて脇に挟む

『少し時間をちょうだい』