箱庭 (ページ42)

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仲直りもどきページ42

もぐもぐとうどんを3人で食べ進めていたがそろそろお腹がいっぱいだなあと器の中を見る
半分以上残っている。ああ、だろうなあ

残すのは申し訳ないと思う。けれど、これ以上食べたら吐く自信があった
どうしようかと器の中のうどんと睨み合いをしていると伊吹くんがAちゃんもうお腹いっぱい?と声をかけてきた

『あー……そう、ですね。いつもこんなにご飯食べないので』

「お腹空かない?あれだったら俺が残りもらっちゃうけど」

『…お願いします』

伊吹の受け皿にうどんを盛りつけ差し出すとありがとうと言いつつ嫌な顔ひとつせず箸をつけた

手持無沙汰になってしまった、と未だうどんを食す二人を前に考える。外の富士山でも見ていようかと窓に目をやると伊吹がふと口を開いた

「これ乾いたの売ってんのかな」

「乾いたの?」

「分駐のお土産」

乾いたの、と聞いて頭を捻る。乾いたの……ああ、乾麺のことかと思い起こすと志摩が一足先に乾麺か?と聞いていた

「乾麺のこと言ってんのか」

「だからそう言ってんじゃん」

『後で店員さんに聞いてみましょう』

伊吹の言葉足らずな発言は前々から何度も聞いていたが、まさか乾麺の文字すら出ないとは…と二人が呆れているなか、伊吹は平然と麺を啜る

「……ひとつ言わせてもらう」

「なにぃ、もう～…飯中に良いじゃん」

この流れは志摩の小言が飛ぶ。と思いさっと目を窓へ移した

「殴って悪かった。……ごめん」

『え』

まさかの流れ弾に力強く隣を向いてしまった
以前安本を逮捕する時に殴ったことを謝られていないのだと聞いて、志摩さんは謝らなさそうだなあと思っていた10分前の自分に言ってやりたい。そんなことはない

志摩が謝ったことによっぽど驚いているのか伊吹も僅かな時間固まっていたが、次にはいつもの調子でにやにやと口角を上げ始めた

「志摩ちゃん!?志摩ちゃん!」

作ったような声で志摩を呼ぶ伊吹に志摩が怪訝そうな顔でうどんから伊吹を見上げるが、面倒な気配を察知して目線が落ちた

そんなものは関係ないと伊吹が志摩の頭へ手を伸ばした

「よくできましたね～～!」

「触るな!」

「うどん一本あげる～」

「いらないいらない汁が飛ぶ汁が」

『志摩さんって謝れたんですねえ…』

「俺をなんだと思ってるんだAは」

プライドは高くなさそうだけど、伊吹相手では折れないような人だとは思っているが言っても良いことなんてない
黙っているのが良策だ