箱庭 (ページ35)

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賑やかな職場ですページ35

『でも私は伊吹さんみたいな人がいても良いと思いますよ』

そういう私や志摩さんにないところが、個人的には好きです
騒がしい一歩手前に騒ぐ二人の間でぽつりと溢すときちんと耳に届いていたのか勢いよく伊吹さんが振り返った

あ、見えない尻尾が振り切れんばかりに揺れてる

「聞いた志摩!?Aちゃん俺のことだーいすきって!!俺も!」

「そんなこと言ってな＿ばっか!!前見ろ前!!」

『あらあら』

「あらあらじゃねえ…!小鳥遊さんも伊吹を調子に乗せない!!ああもう、伊吹はその腕どけろ冗談抜きでセクハラだわ!」

今にもAの肩を抱こうとする伊吹の腕を乱暴に志摩が押し返しAを遠ざけると車体ががたがたと揺れ出す

さっきよりも収集がつかなくなった現状に志摩は頭を抱えたくなった

『あ、でも勿論。疑うことが捜査においては大切だってこと、それは私も志摩さんと同じです』

「えー……Aちゃん小悪魔だなあ」

「大体、加々見を信じるなら誰が犯人だよ」

「岸?」

「証拠は?」

「じゃあ第一発見者?」

埒があかない問答にとうとう志摩が頭を抱えた。どうしてもこの男は加々見を信じたくて仕方がないらしい

笑い出す伊吹にお前は頭がゆるふわなんだよ…と天井を仰いでしまった志摩にAはお疲れだなあと他人事のように感じていた

そこで無線機から一機捜本部の連絡が入った
先ほどの論争から疲弊しきった志摩がだらしなくそのマイクを取った

「はあい機捜404どーぞ」

「は?なにそれ」

声圧が異常に強い桔梗に車内の全員がびくりと肩を震わせた
伊吹とAがこっわ……と志摩を見つめるなか、志摩も声が怖い…と文句を垂れつつ姿勢を正した

「機捜404、どうぞ」

桔梗からの報告は陣馬さんたち401が志摩さんから頼まれた花屋に赴き、監視カメラを確認すると加々見が田辺夫妻を脅し乗車する映像が手に入った

完全に加々見が容疑者から犯人へ変わる一手だ

「マルタイの現在地は?どうぞ」

「富士山名の道の駅に入ります」

高速道路を左折して長い時間運転した先は道の駅だった。対象車両から五つほど離れて駐車すると加々見は女性から離れず下車する

右ポケットに何かを入れている素振りが見えた。凶器だ

「マルヒが凶器を片手に人質を車から下ろしました。危害を加える可能性があります」

「ああ、それと確保の許可お願いします」

伊吹さんから確保の言葉が出るとは思わず二人して彼を見た。まだ信じたいのか彼は万が一だと一足先に外へ出た