触らぬ神に祟りなし ページ46
背後から微かに聞こえる寝息に一人安堵してから女はその足を急いでいた
直属の主である幸村からの命令を遂行させる。その為には背負う男の命は何に変えても喪わせてはならない
あの場を離れ暫くは痛みに耐え、息を殺していたようだが疲労が貯まっていたことにより息が聞こえるようになった
(にしても、幸村様大丈夫かねえ?)
山を下りた頃には既に陽が登り始め肌を刺す寒さが襲いかかってきた
鬼の亡骸は消えてしまうが、戦闘の痕跡が消えるとは限らない
下手に駐在やらに見つかればそれこそ疑われ捕縛されかねない
非公式の組織とは、非常に苦しい立場だ
「………すま、ない」
耳もとで譫言のように発せられた謝罪に胸中、重いものが募っていく隠は一人忍んで息を吐く
よほど冨岡にとってAが死に晒された事実は耐え難いようだ
柱二人の関係が深いのか定かではない。それでも夢に魘され苦しむこの男を見る限りそれなりの親交はあったのかもしれない
願わくば早く再会できればいいと願っていると見慣れた屋敷が飛び込んできた
幸いにも、屋敷の庭に佇んでいるのは屋敷の当主だ
「急患だよ胡蝶のお嬢さん!」
「…あら、貴女は」
任務帰りか隊服を纏った蟲柱こと、胡蝶しのぶが隠の姿を捉え、背負われた冨岡へ一度目をやるとすぐに屋敷へあがっていく
朝早い時間からの来訪にも冷静に対処するところは流石であると感心する暇はない
慣れたように草履を脱ぎ捨て玄関から入る
「手を貸してくれますか?その重症では私ひとりでは手が足りません」
「…あたしは幸村様の隠なんだよねえ……」
医務室へ運び込み寝台へ寝かせてやれば微かに呻き声が下から聞こえた
乱暴にしたつもりはないが、加減を間違えたか
道具を準備する手を止めて振り返る胡蝶の顔を見て隠は溜め息を吐いた
できることなら逃げ出したい。何故なら胡蝶の顔は口元が笑っているものの、目が怒りを宿している
「まあ、胡蝶のお嬢さんには幸村様が世話になってるから…やらせていただきますとも」
「では包帯と鋏をお願いします」
さっさと治療を始めるその手つきは慣れたものだ。その歳にして医術の心得があるのは鬼殺隊にとってどれほど支えとなるか
棚に仕舞われた包帯を手にすると背後からあ。と思い出したように胡蝶が声をあげた
「貴女の主であるあの人には、蝶屋敷で待っているとお伝えしてもらえますか?」
怒気を含む声音に心中、我が主の無事を祈る
126人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月6日 10時