転げた先に絶望 ページ42
赤い血飛沫が飛んだ
鉄臭い匂いを充満させ、地を赤で染め汚すそれは本日何度と目にしてきたものだったか数えるのも忘れていた
けれど、眼前で飛び散った自分のものでない赤い飛沫は脳裏に焼きつけるには十分すぎた
時が止まったような感覚に陥る暇もなく、己の体を掴まれると凄まじい勢いで横へと転がっていく
「っ、……!」
耳元で苦痛に満ちた息が零れ反射的に顔を持ち上げる
ぬるりとした感触が背中に触れると端正な顔が微かに歪んだ
なんで、私を庇ったの?
口をついて出そうになった言葉を無理矢理喉へ押し込め女は唇を噛む
なんで、とはあまりにもふざけた問いだ。体を張り助けられた上で疑問をぶつければこの優しい男は困るだろう
『冨岡はん、』
「……深い、傷ではない」
『辛そうな顔して何を…』
触ってみたところ、確かに冨岡の傷はそれほど深いものではない
だが、あまりにも血を流しすぎている。実際に転がった場所は道筋のように赤が続いていた
出血を呼吸で止めるにしろ、冨岡は既に血を流しすぎている。正直、一刻も早く治療をすべきなのは違いない
「__いやはや。恐れ入った」
顔を青く染めた冨岡を起こしていると場違いにも明快な声音が響いた
どこまでも明るく、空虚な声にAは自然と眉を寄せその正体を知る
対峙するのは藤の鬼。しかし、その姿は頸を斬られた姿ではなく、両の目に数字が刻まれた零の鬼だった
上弦の零、誰も聞かぬ鬼の正体に嫌な汗が滑っていった
「まさか頸を斬られるとは…今生の鬼殺隊員は侮ってはならんらしい」
『つまり、うちらはまんまと泳がされとったわけと』
「はは。弱点を炙り出された時は焦ってなあ。殻に閉じ籠り再生能力を高めていたおかげですぐに復活することができた」
刃こぼれした刀身を手で包むと何を血迷ったのか鬼は力の限り掌から引き抜く
べったりと血液が付着している刀は手入れが届いた刀へと豹変していた
砥石かと疑いがかかるその強靭な肌にらしくもなく頬が引きつる
再生能力だけではない、強度が増しているようだ
「さて、そろそろ引導を渡そうか。出雲の君よ」
満身創痍のこちら側に対し、相手は無傷の鬼
逃げ場所も隠れる場所も奪うよう背後は高さのある崖が
鬼を殺す方法は正直ないだろう。挑んだところで死ぬ未来しか残されていない
かといって、逃げるなどもってのほかだ
『いややわあ』
残された道などひとつしかない
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蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月6日 10時