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弱点 ページ39

冨岡と新月の間に割って入った女は先程に増して疲労の色を濃くしながら泥と血にまみれた番傘で刀を受け止めていた

「巡桜……」

『冨岡はんは止血を。此処で死なれるんは堪りまへん』

Aが刀を押し退け逃げるように上空へ飛び上がるとその場に大きな腕が振り落とされた
僅かな間でも相手の行動を許せば命に関わる
月を背景にAは眉を潜めた

冨岡の容態は腹部の刺傷他、右半身の肋骨の骨折だろうか
あの様子では気づいてもいないようだが

一人、呆れたような息を吐き出し番傘を雑に腰に携えると扇を双手へ
月を味方に新月が眩しそうに目を細めてから畳み掛ける

__舞の呼吸 式舞 翁舞

影の追従をゆったりとした拍子で扇を放り投げ回転させると共にその場を踊らせる
原理は不明だがAの日輪刀のひとつである扇は持ち主を離れても手元に戻る

右手に携えた扇を大胆に新月の頸を狙わせるがそれを許す鬼ではない
彼女の腕を掴むと強引に己の側へと寄らす

「御主も存外しつこいのお。出雲の使者よ」

『あんさんを殺す為ならうちは地の果てまで追いかけるつもりやからなあ』

「御主が儂を殺せる日など来ないだろうがのお。いやあ、哀れ。結局今の今まで御主の刀が頸を斬ったことなどないのに」

掴まれていた反対の手に番傘を握るとAは勢いよく新月の目を潰す
しかしそれさえも気に留めず男はにやりと怪しく嗤うのだ

徐々に戻る眼球には憐れみだけが宿る

『……確かに。うちはあんさんの頸を正しく斬ったことはあらしまへん…けど、今までが全て無駄だったわけやない』

「なに?」

『あんさんの頸は特殊なもの。斬る順番がある』

鬼が女の息の根を止めようと刃先を差し向けるが、それは届かない
いつの間にか飛んできた扇により頸を切断され一時的に隙が生まれるとAは横をすり抜けた

__血鬼術 影踏み

即座に女の後を続くように何体の人形を模した影が追う
しかし、Aは余裕ありげに駆けて行く

襲いかかった一体の影が彼女の手元の扇により屠られる
疲労を感じさせない力強さで切り刻みながら笑う女に新月が苦々しい顔を変えない

扇舞はゆったりとした拍子で舞うが、後半になれば拍子が変わり、衰えることのない力を発揮する

『頸は体を繋ぐ部分が後、先に斬るべきは…月明かりに伸びる暗いもの』

何年も追い続け見つけ出した弱点。それは、彼女の今までが無駄ではない証明になるのだ

滅殺への一歩→←朱が滴る花



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蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月6日 10時

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