その女の名前は ページ4
芸妓ではないにしろ、芸妓に近いものだとAは考えている
一度雪が散る雪原の上で舞ってみせれば戸惑いが勝っていた店主も次第に彼女の舞いに見入り、いつのまにやら多くの目を惹き付けていた
辺鄙な村には舞いなどの遊戯に縁がない。それでも観客は第一にこう思う
なんて美しい舞いなのか
指先を器用に使って1つ1つの動作を体現させゆく姿の繊細さ、おまけに雪との関係もありより儚さを生む女の線の薄さ
雪と同化するのではないかと尚更観客の目を奪う
「随分な別嬪さんじゃねえか…なあ、炭治郎?」
「あ、ああ…そうだな」
観客の波の後ろでは童たちが興味津々に舞いを見つめ感嘆の息を吐く
その声すら聞こえないほど女は集中して辺りに意識を飛ばす
(見たところ、鬼はいなさそうや)
舞うことが遊びではない。Aにとって舞いは自身を高める鍛練のようなものてもあれば、時には鬼を見つけるものともなる
舞いはただ舞うだけでも集中力、体力、更には体の正しい使い方が必要になる
鬼殺隊の一人としてはどれも鍛えて損はない
鬼を見つける、と言ったが。彼女は元々目が良い
それは純粋に目が良いのではなく、相手の本質を見抜く“良い”という意味だ
鬼か人間か、見極めるための察知能力は周りにひけをとらない
頃合いかと、舞いに区切りをつけ扇子を懐へと仕舞う
「良い舞いじゃねえか。道理で番傘は赤いままなんか」
舞いに使用される番傘は赤でなくとも構わない。けれども古来から番傘と言えば赤、という風習は消えず未だ舞いに柄の入った傘を使用する芸妓は少ない
「さぞ名高い芸妓なんじゃあないのかい?」
「お前さん、名前は?」
聞いておいて何になるのだろうか。そう思っても口にはしない
一瞬だけ困った顔を浮かべながらも次には人の良さそうな笑顔を浮かべた
『うちは出雲の阿国のようや、とよう言われとります。せやから阿国と』
番傘をくるりと回す様は、出雲の阿国と言われてもおかしくないほど
名は体を表すとは、正にこのことだ
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蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (
レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蜜柑 | 作成日時：2019年5月6日 10時
