お呼びだし ページ20
それから、当初の目的であった産屋敷邸への呼び出しについて伝え二人はそのまま産屋敷の下へと向かった
通された和室に産屋敷の姿はまだなく、縁側の向こうから流れる微風が肌に触れる心地は良い
「二人とも、よく来てくれたね」
待つこと数分。二人の前に姿を現した産屋敷は自身の娘を付き添わせ労りの言葉をかける
即座に居住まいを正し主君に対する態度を示す
『ご壮健で何よりどす、お館はん』
「ありがとうA。さて、早速で悪いけど件の鬼を連れた少年について改めて報告を聞こうか」
鬼と化した禰豆子を殺さず炭治郎共に元水柱鱗滝の下へと預けた報告は既にA自らが文をしたためた
だがいくらこと細かく詳細を記そうが当時の情景、心情、状況。全てを語るには文字を連ねるだけでは足りない
だからこそ、産屋敷は二人の口から直接の報告を望んだ。当事者本人らからの弁明を、聞かせてほしいのだ
(腹括らんとなあ)
鬼殺隊。何度も言うが鬼を殺す役割を持つ隊士がそれを放棄し、見逃している
良くてお咎め、最悪脱退というところか
「そちらに届いた報告の通り、鬼の禰豆子をその兄炭治郎と共に鱗滝左近次の下へ預け入れました」
内心溜息を吐いていたAに代わり、先に口を開いたのは冨岡だった
産屋敷は穏やかな顔つきを変えることなく頷き続きを促す
「鬼を滅する隊士が鬼を生かす、その事の重大さは重々承知。如何なる処罰も受ける所存でございます。今ここで腹を切れと言われるならば、お館様の命令に従います」
「……義勇」
「………」
それ以上語ることはないと頭を垂れ目蓋を下ろす冨岡は産屋敷に名を呼ばれても頑なに譲らない様子である
相応の覚悟を見せられたAは初めて冨岡に好感を抱いた
『鬼の禰豆子と炭治郎の二人にはなんかしら違うたものを感じられる。うちも冨岡もそう思たさかい生かしんした』
冨岡にのみ責任を押しつけるのは道理が違う。口を閉ざした彼に代わり彼女が状況の補足を行い始めた
言い訳、と言われても反論のできない弁解に聞こえるだろうが女の目は真っ直ぐに主たる産屋敷へ向けられている
『隊律違反の覚悟は両者共に出来とります。うちも鬼を生かした隊士として、自刃するつもりどす。
全ては、お館はんの命のままに』
隣で頭を下げる彼に倣い己の額を畳に押しつけるA
鬼殺隊を支える柱二人が頭を下げる程、事態は大きいのであろう
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蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月6日 10時