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遭遇 ページ14

暗闇の中、ガサリと音をたてて叢を掻き分ければ葉を滑り落ちる雫が手の甲へと流れを止めた

夜も更け獣の通ったような道に佇む女は一人、空に浮かぶ月を見上げながら息を吐いた
月下美人とでも称されそうな景観だが、彼女の胸中はそれどころではない

『すこぉし歩くのが早かったかしら……?』

山を登り始めてから時が経たぬ内に、空の景色が夜の幕を下げ始め空を覆った
二人を庇いながらの鬼退治は避けたいと早足に動かした足に炭治郎が追いつけなかったのも無理はない

Aと其処らの隊員では経験も実力も天と地ほどの差がある
それがつい先程までは炭焼きの家の息子相手ならば置いていかれるのも当然の流れ


圧倒的に配慮が足りなかったAが悪い


『ううん……まだ生きとればええんやけど』

日輪刀を持ち合わせぬ炭治郎には鬼を殺す術がない
おまけに妹を背負った状態で相手どるのも相当大変であろう。一抹の不安を抱え炭治郎たちを探し始めようと一歩を踏み出して

視界にちらついた水色に即座に動きを止めた


『……おやおやあ。えらい早いどすなぁ、鱗滝はん』

月明りの下、月光に照らされた一帯へ姿を現したのは天狗の面を着けた老人
彼女の言う鱗滝左近次とはこの男を指す

「義勇から話は聞いている。まさかお前がここに立っている事の方が驚いておるがな」

『出雲の阿国はいつ没年するのかと散々に言われとうおります故、驚くのも無理はありまへん』

「……そうか。昔から変わっておらんな」

二人は古くからの知古であるのか互いに気を緩めている要所が言葉の節々に垣間見える
鱗滝は月光に照らされた女の恐ろしさを改めて感じ取った

以前から何一つ、変わっていない容姿。あれからどれ程の歳月が流れたとも思わせぬ気配を察知する能力
Aには老いという2文字が存在していないと謡われても可笑しくないのだ

「お前の案内してきた童を堂の辺りで見かけた。篭を背負った男だろう」

『ええ、彼でございます。…道中はぐれてもうて』

案内役を買って出た筈がその責務でさえ執行できぬとは何たる者か
恐怖とは別に、鱗滝は汗を流す

例えこの女を畏れていようが人柄から漂う善人臭がどうにもAを嫌わせてはくれぬ
だから鱗滝は彼女が嫌いになれなかった。ずっと前から

記憶に触れる→←いざ、向かわん



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蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月6日 10時

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