沈黙の塔、鴉の宴 ページ36
太宰さん仲介の下、執り行われる探偵社とマフィアの密会は彼の努力もあり着々と準備を整え迎えた当日
少し離れたところに社長と国木田さんを待機させて待ち合わせの場所には私と太宰さんが森さんの到着を待っていた
「本当によかったのかい?私に任せて社に戻っても構わないよ」
本来森さんを待つのは塀に腰かけている太宰さんだけで善かったのだ。それを私が自ら社長に頼み、彼の付き添いを現在進行形で行っている
太宰さんがこう何度と問いかける理由もわかっている。森さんと引き合わせることで私にとって不利益が生じるかもしれない、可能性。
それは自分だって同じ、否彼は私以上に会うだけでもリスクがある筈なのにと内心苦笑し乍ゆるりと頚を振った
『いいえ、此処にいますよ。そもそも森さんとはもう会っているので今更思うことは何も…』
微かに目を見開いていた太宰さんに以前モンゴメリちゃんと対峙したあの日の出来事を説明すると納得したように彼は首肯く
しかし、どことなくその顔は険しいのは気のせいではない
「それなら尚の事私に早く伝えるべきだ。森さんと接触していたなんて…」
『あの時は組合の事で手一杯だったので、これ以上問題を増やしたくなかったんですけど…確かに軽率でしたね。すみません』
「あぁいや、謝ってほしいわけじゃなくてね」
困ったように眉を下げた太宰さんは一度だけため息にも似た息を吐くと改めて此方に向き直る
「……君が私の預かり知らぬ場所で危険な状況に陥っていると思うと、私は」
『太宰さん…』
向けられた双眸の揺れはきっと、四年前の私では気がつかないほど小さかった
敦くんの救出前の屋上の出来事といい、彼はまだ怖いのだろう
一度、私は太宰さんに死んだと思われていたので尚更だ
その想いは私には同情できても共感できるものではない。喉の奥に言葉が詰まった私の頭にそっと掌が触れられた
「だから、私がAを気にかけ過ぎて寿命を縮めてしまわぬよう気をつけてくれ給え」
空気を入れ換える普段のおちゃらけた口調で笑ってみせる太宰さんに私は隠された恐怖が少しでも癒されるように彼の手をとった
『はい。気をつけます。太宰さんが不安に思わないようにできるだけ隠し事も無くしますよ』
「……絶対にと云わないんだ」
『状況に依っては無理なときもありますから』
けれどその時は彼のことだから私の考えを汲んで納得してくれるだろう。その意味も理解して、太宰さんは君らしいねぇと私の手を握り返した
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蜜柑(プロフ) - かりんとうさん» コメントありがとうございます〜1から読んでもらって書いた本人としても嬉しい限りです…!更新は不定期ですが出来る限り尽力していきたいと思います。これからもよろしければ応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年5月6日 12時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - 1から読みました。本当に面白くて面白くて、読み進める手が止まりませんでした笑こんなに素敵な作品があったとは……!これからも更新楽しみにしています!!頑張ってください! (2019年5月6日 12時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - イエさん» コメントありがとうございます…何故だか完結したことになっておりますが続けていきたいと作者本人は思っております…!更新は今停滞気味ですがこれを機に更新していきたいと思います〜… (2019年5月5日 8時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
イエ - お、終わり?面白かったのに…頑張って更新してください!お願いします! (2019年4月29日 23時) (レス) id: e962cbea86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年1月5日 14時