恋を焦がして何となる ページ23
煙草を咥え去っていった彼の背中を見送り、未だ目を覚まさぬ少女の隣へと腰掛ける
寝息を立てているものの夢見が悪いのか眉間に皺を寄せる姿に今すぐに起こしてやりたいと思うが無理をさせてしまった訳だ。眠らせるのが良案だろう
せめて楽になれるように折れていない手で彼女の手を握る
「………A」
普段なら愛らしい声音で何ですかと聞き返す声が今は聞こえない
それが少し有難いと思う
彼女に向けるこれが恋と呼べるものだったらどんなに良かったことか、楽だったか
「すまないね」
恋と呼ぶには重すぎて汚れている
執着に似た感情は彼女にとって伝えてしまえば重荷となり、いずれ彼女を苦しめてしまうだろう
だが、誰かに譲る心算も手放す心算も毛頭ない
己の感情がここまで厄介なものだったのかと初めて理解した
愛されることはあったが、人を愛すことは彼女が初めてだなんて。恐らくAは知らない
「私はもう、唯の友人であることに満足していないのだよ」
彼女と再会してからつくづく自身の欲の強さと何度も痛感させられた己も人間だったこと
どれもこれもAに出会わなければ知り得なかったものばかりだ
『ん………』
ふと、彼女から漏れた声に起きたのかと焦るがAは握られた手を両手で包み込んでから再び寝息を立て始めた
心做しか眉間に皺の姿はない
少しでもその悪夢から解放してあげられたのなら、そう思ってしまう程に落ちているようだ
「………却説、そろそろ此処に居ては体を冷やしてしまう」
残念ながら片手は使えないから抱えることはできない
彼女の細腕を頸に回し支えてみせる
その腰の細さに普段とは逆に心配になってしまう
食の細いAはもっと食べるべきだろう
起きたら小言の一つくらい云ってみようではないか
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蜜柑(プロフ) - かりんとうさん» コメントありがとうございます〜1から読んでもらって書いた本人としても嬉しい限りです…!更新は不定期ですが出来る限り尽力していきたいと思います。これからもよろしければ応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年5月6日 12時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - 1から読みました。本当に面白くて面白くて、読み進める手が止まりませんでした笑こんなに素敵な作品があったとは……!これからも更新楽しみにしています!!頑張ってください! (2019年5月6日 12時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - イエさん» コメントありがとうございます…何故だか完結したことになっておりますが続けていきたいと作者本人は思っております…!更新は今停滞気味ですがこれを機に更新していきたいと思います〜… (2019年5月5日 8時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
イエ - お、終わり?面白かったのに…頑張って更新してください!お願いします! (2019年4月29日 23時) (レス) id: e962cbea86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年1月5日 14時