ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス(前編) ページ28
「小僧、お前が行け」
「へッ!?」
暫く思考を巡査させていた国木田さんが指名したのは意外なことに谷崎くんではなく敦くんだ
『敦くんですか?初仕事にしては些か不安な気がしますが…』
「初仕事だからこそだ。この仕事はただ見張る、それだけだ。
それに密輸業者は無法者だが大抵は逃げ足だけが取り得の無害な連中、丁度いいだろう」
それは分かっているのだが…本当にそれだけで済むのだろうか
ちょっと心配だ
「でっ、でも」
敦くん自身も入社早々初仕事が張り込み調査なんてある意味不安な点が多いだろう
「谷崎 一緒に行ってやれ」
「兄様が行くならナオミ随いて行きますわあ」
流石にそんな彼に対して無慈悲ではないのは国木田さんらしい。確かに一人よりも二人の方が敦くんとしても楽だろう
谷崎兄妹となると話は別かもしれないけど……
『それじゃあ私も外に行ってきますね』
「ああ、頼んだ」
敦くん達が現場へ向かったのを見送り数刻、そろそろ時間だと席を立てばヘッドフォン(恐らくあれで盗聴しているだろう)を耳に当てた太宰さんが首を傾げた
「あれ?Aも出掛けるのかい?」
『先刻出した来客用の茶葉が切れたので他の備品共々買い出しに行こうかと』
「へえ……そうなんだ」
私の返答に神妙そうな顔をしたと思えば太宰さんは手招きしてきた
その手振りに今度は私が首を傾げる番だが要求には従っておこう
とソファに寝転ぶ太宰さんに近寄ればいきなり手首を掴まれそのまま引かれた
「おい、太宰!!」
『わっ、と……』
咄嗟の出来事にすぐに対応できなかったおかげでされるがまま
太宰さんの睫毛長いなあと思うくらいは彼との顔の距離が近い
「無茶は禁物」
首元を触りながら私にそう囁く太宰さんは国木田さんが後ろで怒鳴っているのが聞こえてないのかなあなんて思いつつ慌てて私は距離をとった
にこにこと笑う顔が忌々しい
『っ………良い声してるからほんとそういうの困ります』
「んふふ。Aに褒められるなんて棄てたものじゃないね私の美声も」
褒められていい気になっている太宰さんを国木田さんが場所を弁えろとぶっ叩くのは定石と云ってもいいだろう
(無茶は禁物って………太宰さん先が読めてるのか)
これから私が無茶をすることが起こると、そう言外に云いたかったのだろう
相変わらずとんでもない人だ
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2018年7月7日 17時