或る爆弾 ページ22
「社長」
『試験終わりましたよー』
「しゃ、社長!?」
国木田さんが律儀に頭を下げるのを眺めつつ机に座ってひらひらと手を振ってみたけど特に反応が返ってくることはない
そういうとこ社長らしいなあ
「そこの太宰めが有能なる若者が居ると云うゆえ、その魂の真贋、試させて貰った」
「君を社員に推薦したのだけれど如何せん君は区の災害指定猛獣だ。保護すべきか社内で揉めてね」
『それを社長の一言でこうなった…ってことだね』
「で社長……結果は?」
社長は暫く敦くんを見つめると何を云うわけでもなく目蓋を伏せ体の向きを変える
やがて社長から発せられた言葉は
「太宰に一任する」
たったその一言だけを残して社長は去っていった
「合格だってさ」
残された敦くんはぼんやりとしているので肩を叩いてみるとはっと我に返ってくれた
「つ、つまり……?僕に斡旋する仕事っていうのは此処の…?」
斡旋する、なんて太宰さんに云われて着いてきたのか。だとしたらそれはあり得ない話だ
太宰さんが仕事を斡旋するなんて、ね
「武装探偵社へようこそ」
くすりと笑った太宰さんの勧誘の言葉にただ冷や汗を流す敦くんに南無阿彌陀仏と心の中で唱えておこう
太宰さんが敦くんを引き入れたのならばそれはもう覆せない決定事項のようなものだ
「ぼ、僕を試すためだけに……こんな大掛かりな仕掛けを?」
『今日のはまだ序の口だよ?』
「この位で驚いてちゃ身が保たないよ?」
平然と答える私たちに敦くんは座り込んだまま距離をとって無理だと唱える
無理、って云ってもなあ
「おや、君が無理と云うなら強制はできないね」
『……でもそうなると問題がありますよね』
「そうだねえ……となると君が住んでる社員寮、引き払わないと」
それだけではない。寮の食費、電話の支払い…挙げ出したらキリがない問題がある。主にお金問題だけど
その支払いについて大丈夫?とにこやかに笑う太宰さんに選択肢がないことを悟った敦くんは涙を滝のように流していた
こうして、強制的に?新しい社員が一人増えたのでした。目出度い目出度い
59人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蜜柑 | 作成日時:2018年7月7日 17時