人生万事塞翁が虎 ページ14
虎化の解かれた彼はまだ異能力を扱い慣れてないせいか起きる気配もなく依然眠っている
「男と抱き合う趣味はない」
『ちょっ…』
それでもお構い無しに太宰さんは敦くんを引き剥がし地面に捨てる
いくらなんでもそれは無いだろう。慌てて地面に倒れた彼に駆け寄り様子を伺う
…うん。怪我はしてなさそうだね
「Aは私よりも敦君のことが心配なの…?」
『いや、太宰さんを心配する理由なんて無いですよね?』
「うう…Aが冷たい…」
態とらしく傷ついたとシクシクと顔を手で覆うこの人は放っておいて私は敦くんを仰向けにしれあげる
うつ伏せは辛そうだしねー
「おい太宰!A!」
そんな茶番をしていると倉庫の出入口から国木田さんが現れた
あれ、今まで何処にいたんだろう。そういえば
『国木田さん』
「ああ、遅かったね。虎は捕まえたよ」
太宰さんがけろっと何でもないように手を退け敦君を指差す
やっぱ嘘泣きなんですね
「その小僧……じゃあそいつが」
「うん 虎の能力者だ。変身してる間の記憶がなかったんだね」
「全く＿＿次から事前に連絡しろ。肝が冷えたぞ」
『これはまた…分かりにくい…』
頭を掻きながら国木田さんの取り出したメモは十五番街の倉庫に虎が出る。周囲を包囲しろとなんとも簡易敵なものだ
「おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ」
そう告げる国木田さんの後ろから探偵社の面々が倉庫に現れる
「なンだ。怪我人はなしかい?つまらないねェ」
与謝野晶子＿＿能力名“君死給勿”
「はっはっは。中々できるようになったじゃないか太宰、A。
まあ僕には及ばないけどね!」
江戸川乱歩＿＿能力名“超推理”
「でもそのヒトどうするんです?自覚はなかったんでしょ?」
宮沢賢治＿＿能力名“雨ニモマケズ”
「どうする?一応区の災害指定猛獣だぞ」
国木田独歩＿＿能力名“独歩吟客”
『うーん…でも軍警に渡すのも可哀相ですよ』
室生A＿＿能力名“或る女の死まで”
「うふふ、実はもう決めてある」
太宰治＿＿能力名“人間失格”
太宰さんは意識のない敦くんを一見すると次にはいい笑顔でこう云い放ったのだ
「うちの社員にする」
数刻の沈黙、からの国木田さんの驚愕の叫び声が倉庫に響いたのであった
これが事の始まり＿＿
怪奇ひしめくこの街で変人揃いの探偵社でこれより始まる怪奇譚
これが先触れ前兆し＿＿
中島敦＿＿能力名“月下獣”
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作者名：蜜柑 | 作成日時：2018年7月7日 17時
