進むために ページ43
少し離れた場所の木の幹に凭れて目蓋を閉じていると木々の隙間から木漏れ日が射し込んできた
もう夜も更け朝になっていたみたいだ
「Aちゃん」
ぼんやりと朝日を眺めていると頭上から声がかかった
顔を上げると目を赤くしたリンタロウと目が合ってぼうっとその顔を見上げる
首が痛いのですぐ止めたけど
『もういいの?』
「うん」
差し出された手を握って起こしてもらい私は問う。もう迷いはないのかやけにはっきりと返されてしまった
「いつまでも泣き虫のままだったら姉ちゃんに顔向け出来ないから」
握ったまま引き寄せられた体をリンタロウが強く抱き締める
隙間がなくなるほど強く、きつく
『ちょ、折れる折れる』
「Aちゃんは見た目に反して強靱な体をしてるから大丈夫だよ」
『怪我人に対して強靱とは…』
離すつもりは毛頭ないらしいので仕方なく私も彼の背中に腕を回す
密着した体からは規則正しく心音がトクトク聞こえてくる
ちゃんと生きている人の体だ
「これからどこに行こうか」
『んー…本当は警察に自首するのが一番だけど……』
だがそうしてしまえばあのゲームは何になるのだろうか
私たちが人間の弱さに気づくためのゲームだったあれは無駄だったのだろうか
多くの犠牲を出しておいて
『……なんにせよ、私はリンタロウについてくよ。約束したし』
「ああ、あのずっと隣にいてくれるって約束のことか」
『…恥ずかしいからあんまり掘り返さないでよ』
我ながらプロポーズ染みた約束だと思うしそれは彼もだろう
さっきからやけに微笑んでくる
『…生暖かい目はやめてって』
「そんなつもりはないんだけどなあ」
不意に目蓋に落とされた柔らかい感触に私は目を見張ってしたり顔の彼を睨み付けた
いきなり何するんだこの人……!
『なに、して』
「…ごめん、どうしてもやりたくなって」
慈しむような視線はむず痒いのにそれをやめてはくれない
本当にリンタロウは私のことが好きなんだって分かってしまうからほんとに、ああ、もう
「え、ちょ…Aちゃ」
背中から手を離して首裏に手をやった
そこから力任せにぐっと引き寄せ柔らかな唇に自身のものも合わせた
触れるだけのキスに目の前の彼が零れんばかりに目を見開くものだからつい笑ってしまった
『ん……私も、やりたくなって』
「……狡いなあほんと」
お互いに顔を赤くして抱き合う姿はやっと恋人に見えるのかな
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橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します！とても面白かったです！今後とも応援しています！頑張って下さい！(*´ω｀*) (2022年6月13日 10時) (
レス) @page46 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶 - 面白かったです！蜜柑さんの作品が１番好きです！これからも頑張ってください！ (2020年3月10日 20時) (レス) id: 203f8de236 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - カルビさん» コメントありがとうございます〜!こ、コツですか……具体的にどのようなコツでしょうか? (2020年2月4日 22時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ - お話読みましたが凄いです。なにかコツとかあれば教えてください、 (2020年1月30日 14時) (レス) id: 9d5eab3caf (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 涼花凛娘さん» ありがとうございます！金曜日か土曜日あたりに作成できたらいいなと思っているので良かったら是非…！ (2018年7月4日 22時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蜜柑 | 作成日時：2018年4月26日 21時
