これは、私とのさよなら【飯田リンタロウ】

狼ゲームのはじまり ページ32

『これって…サトルさんの、人形…?』


イスに座り首を曲げるその姿は先程目の前で処刑された彼にそっくりだ


「確かにそっくりだ…」

「なにか持ってるみたいだね♪」


彼の握っていた紙を広げるとこう記されている

お前は救えただろう?しかし、お前は見捨てた


まるでサトルさんに対して伝えている文面なのか私たちに伝えている文面なのか判断することが難しい曖昧なもの


「どう言うことだ?」

「んー…意味不明だね♪」

「あ!あとこの書類…」


紙の文面に違った反応を示していると机の上に書類を見つけた

バインダーに挟まれた書類だが項目は過剰な薬 物投与への注意となんとも危険そうなものだ


「しかも、5年前のものやね…」


(5年前……丁度私の記憶がない年だ…)


「…読んでみるよ」


ユキナリの読んだ書類の内容はサトルさんに宛てられた薬 物中毒者の監査結果、といったところか


「おそらくサトルさんが患者に大量の薬を投与していたということかもしれない」


「サトルさんは真面目に医者の仕事をやっていなかったのかなぁ?」


そうだとしてもどうしてこんなところに彼宛の書類が置かれているのか。
まるでこれだと彼はこういう人物だと私たちに伝えたがっているみたいじゃないか


「それにしても、なんでこんな人形が用意されてるんだろうね?」


「狼ゲームの主催者が俺たちに何か伝えようとしているのか…」


「じゃあ、この壁に書いてある文字もそうなんだろうね」


オサムさんに倣って壁を見上げると黄ばんだ文字で、
お前たちが集められたのは偶然ではない…必然だ
と書かれている


「俺たちが集められたのは必然…ということは俺たちは何か共通点があるということか…」

「でも私たちは全員初対面でしたよね?」

「私はもう、数年も引きこもってるから…みんなと会っている可能性は0です…」


各々が初対面だと口にするであれば多分初対面なんだろう


(だとしたら考えられる共通点はみんなが共通して何かに関わっているとか?)


ちらり、何気なく見たサトルさんの書類の5年前という数字が何故か気になった

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