6.やっと ページ7
その後何とか破壊の跡を乗り越えたAは新たな困難にぶつかっていた。
「おい人間！なぜここにいる！」
それはこちらのセリフだと言わんばかりに深い溜息をつく。
Aの前に現れたのはカメと恐竜を混ぜたかのような怪人。鎧を身にまとっており戦闘を得意としているようだった。
「今溜息をついたな！しかも大きめの！許せん…この我の前で溜息とは…」
バキバキと何かが割れている音が鳴り響く。怪人を見ると膨張した体に耐えられなくなった鎧が砕けて、アスファルトに部品がたたきつけられていた。
恐らくAだけでも問題はないだろうが、彼女が最も心配しているのは怪人を倒したことによって服が汚れてしまわないかということだった。
せっかく兄に会うからと気合を入れてコーディネートしたのだから、完璧な状態を保ちたい。
こんなことならヒーローを待っていればよかったかもしれないとぼんやり考える。
「逃げないのなら殺すぞ！！」
怪人の鋭い爪が降りかざされAに襲い掛かろうとしたその瞬間、怪人の頭が勢いよく左側に吹っ飛ばされた。
流石に命尽きたのか、へなりと膝から崩れ落ち最後には突っ伏してしまった。
「(今のは私じゃない…誰が…)」
「おい、お前大丈夫か？」
恐る恐る声のする方を見ると、スキンヘッドに黄色いスーツ、真っ白な長いマントをなびかせた男性が立っていた。
しかし、その声はとてつもなく聞き慣れたものだった。
「もしかして…お兄ちゃん…？」
「え？」
男性は小首をかしげ、どうやら理解していない様子だった。そういえば変装しているのだったと気づいたAは、帽子、マスク、サングラスを外してもう一度向き直る。
「私だよ！Aだよ！」
「あ！Aか！つか何でいるんだよ！！」
やっと認識した兄サイタマはいそいそとAに駆け寄る。急な再会に頭の処理が追い付いていないのか、眉をひそめながらAの顔を凝視している。
一方のAもサイタマを凝視していた。特に…
「お兄ちゃん…何で髪の毛無くなってるの…？」
「…そうか、そうだよな…」
Aの記憶ではサイタマの頭にはフサフサの黒髪が生えていたのだが、目の前のサイタマは日の光が反射するほどの見事なツルツルスキンヘッドだ。
記憶とは真逆な姿のサイタマを見て困惑を隠せないが、本人が気にしているようなのでこれ以上掘り下げないことにした。
「…ま、お互い聞きたいことあるみたいだから、俺んち来るか？」
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作者名：みかんどっとこむ | 作成日時：2020年12月10日 1時
