【男主】悪い夢なら覚めてくれ。【第五人格】 (ページ3)

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未練① ページ3

別れを切り出したのは
紛う事なき私、Aである。

それなのにどうして

目が腫れるほど泣いてしまったんだろう。

悔しさからか。

悲しさからか。

寂しさからか。

心の中で唱えてみたものの
どれもしっくりこない。

『っ…。』

「わ。」

君から貰った物も、お揃いも
少しは捨ててみたりした。

「ハンター寮で気を抜くって
…君は中々、肝が据わってるね。」

強い風が吹き、彼の胸中に引き込まれる。

『大変申し訳ございません、＂イタカ様＂。』

「なんだ。その口ぶりだと仕事中か。」

それでも嫌いになれないし
忘れはしない。

そもそも、別れを切り出した理由は
嫌いになったというわけじゃないから当たり前だ。

「…泣いたの？」

鋭く、ピリピリした空気が頬を切る。

『えぇ、少しだけ。』

「少しじゃない。
僕も手伝う、仕事が終わったら休んで。」

『感動的な小説を読んだだけです。
それ以外に理由はありません。』

彼のことばっかり考えてる。

どれだけ理由を探しても
彼のことを愛している私だけが
見つかってばかり。

「別れたんでしょ、ノートンと。」

『え？』

どうしてそれを。

尋ねる前に
彼は私の腕を強く掴んだ。

「風の噂だよ。

…ねぇ、今君は誰のものでもないんでしょ。」

心臓が、強く跳ねた。

「気にせずアタックできちゃうね。」