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ぱこん、ぱこん。と気持ちの良い音が耳を擽る。
部活の休憩中に赤也が、「あちいー」と文句を垂れながら日陰になっているこちらへと足を運んだ。それに遅れて仁王も涼しさを求めてやってくる。
「……暑いぜよ」
「お前はとびきり暑さに弱いからな」
普段ならしないがあまりの暑さに項垂れてる仁王にメニュー表の紙を挟んだバインダーで風を送ってやる。風なんてそう来ていないだろうに「おー、参謀は優しいナリ」なんてマヌケな声が聞こえたところで腕の動きを止めた。
「あー、俺にも、暑かったら仰いでくれる可愛い彼女がほしい」
「俺は女ではないが?」
赤也の言葉にからかうように言った。半分本気で捉えたのか、「ちがくて!」と顔を赤くしながら首を振る。
「…A先輩。彼氏、いるんすかね」
「あー」
驚くことに赤也が名前を出したのはAだった。仁王も少なからず同意の声色を出す。昨日の今日で、彼女の本当の姿を知ってしまった俺は軽く顔を歪めた。
「あいつはやめておけ」
「えー!なんでですか!まさか柳先輩も狙ってるとか…?そうしたら俺、ぜってえ勝ち目ねえじゃん」
狙っているなんてまさか。
どうにも好きになれない、あの感じ。俺は、人に対する好き嫌いをつけぬようそれなりに努力してきたが、あいつだけはどうにも好かない。
「仁王に並ぶ詐欺師だ」
「ぷり」
まあ、あながち間違った表現ではない。優しくて女性らしい部分に惚れている男をもれなく騙しているのだから。
しかし、ただ一日、放課後肩を並べて帰っただけでとやかく言う筋合いは俺には無いと考え直し、「練習に戻れ」と赤也と仁王を追い払った。
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作者名:ぽんず | 作成日時:2017年9月18日 8時