肆 ページ5
「五虎退」
「はい、主様！」
五虎退のお面を外してあげる。そして、そのまま五虎退を抱きしめる。本当はこんな仕事に五虎退を突き合わせたくない。
「主様、行きましょう？」
小さな手が私の頭を撫でる。いつも私が五虎退にやっていることの真似をして、五虎退なりに私を励ましてくれているのだろう。
「うん」
小さな身体にどれだけ重いものを背負わせているんだ、私は。頬を叩いて気合いを入れ直す。
私にしかできないことがあるでしょ、さっさとこんな汚い場所から救っていかなきゃ。
さっきの山姥切国広が消えたところを見ると、刀剣男士用の部屋があることは明確だった。
けど、この本丸にはそこまで部屋数はなかったはずだが？
…ふと、嫌な考えが私の頭をよぎる。
どこかに、閉じ込められていたとしたら？
アドレナリンのせいもあるのか、元々怪我の治りが早い私の手の傷は綺麗に消えていた。その手でお面を荒々しくとる。
ぶつり、と紐の千切れる音がしたが、そんなこと気にしていられない。
目を凝らし、必死に刀剣男士へと辿りつけそうな痕跡を探す。__見つけた。
新しい血液と、そこから、続く、殺気。人を呪い殺してしまいそうなぐらいの、とても恐ろしい殺気。
きゅっ、と私の袴を握る五虎退。此処で待ってて、と言っても多分聞いてくれないんだろうな。
「ここ、だ」
襖なのに、鍵がかかっている。その前に佇む山姥切国広。
「主様、山姥切さんは僕に任せてください！」
「…うん。何かあったら呼んでね」
この頃は五虎退もよく手伝ってくれる。私よりも、同じ刀剣男士である五虎退の方が良い時もあるから、山姥切国広は五虎退に任す。
南京錠の鍵がないので、南京錠ごと襖の一部を壊す。とても荒くて、余計に刀剣男士を刺激してしまいそうだが仕方ない。
__どうせ私は死なないのだから。
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